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有用かつ信頼性の高い情報を得るための基本コンセプト 籠谷邦夫さん

      2015/08/24


有用かつ信頼性の高い情報を得るための基本コンセプト 籠谷邦夫さんDecision leads to life. ゴールまでの流れ、そしてポジショニング。
理念を磨け、新たな価値の連鎖を生み出せ。あなたの意思決定の質を高める、意思決定スタイリストのSHIMOMUJRA Takujiです。

あなたの意思決定の質を高める過程で、「理念」、「これから実現することの意味」を鮮明にしていくことは必然になります。

プロローグ

私は大学院で「意思決定論」を籠屋邦夫さんから学びました。籠屋さんはスタンフォード大学でハワード教授から意思決定理論を学ばれ、ハワード教授の主催するコンサルティンググループでコンサルティングをご経験。帰国後、デシジョンマインド社の代表を勤められています。

「ディシジョンマインド」とは、「自らの意思と能力で未来を切り拓こうとする気構え」です。

今回は、籠屋さんの著書「意思決定の理論と技法 未来の可能性を最大化する」より、「有用かつ信頼性の高い情報を得るための基本コンセプト」のEssenseを私の視点でまとめました。

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有用かつ信頼性の高い情報-不確実性の認識の取り扱い方および意思決定の視点からの重要要因の絞り込み

幅と確率による不確実要因の定量的把握

「このプロジェクトはたぶん成功すると思います。」

あなたのプロジェクトチームのメンバー全員がこう考えていたとします。
その自信度(0%~100%)を各メンバーに「成功する最小確率と最大確率は何%と何%になるか(最小確率~最大確率)」と尋ねたら皆同じ幅で最小確率と最大確率を答えるでしょうか。

(著者は)過去にコンサルティングしたクライアントに確認した。
その結果、最小確率と最大確率はヒトによって異なり、あるヒトの最大確率が別のヒトの最小確率よりも小さいことも起こった。
この現象はグループが同じ会社、同じ部署に属するヒトであっても、洋の東西を問わず起こった。

「このプロジェクトはたぶん成功すると思います。」

複数のヒトがそう言ったとしても、それぞれがまったく違うことを考えている可能性がある。

こう考えると未来の不確実性に対する判断を共有化し、ディスカッションを行うための的確な共通言語が必要である。

デシジョン・マネジメントのアプローチでは未来を予測する専門家(エキスパート)の「主観的確率(未来の不確実要因に対して、科学する心を持って行った判断を数字で表したもの)」を共通言語と考える。「統計的確率」とは異なる。

「大きいときは〇〇ぐらい、小さいときは△△ぐらい。」

この主観的確率を「楽観的1点読み」ではなく、「だいたい正しい(approximately right)」として決める。

「まったく見当がつかない(I have no idea)ということはないはずだ、何がしかの見当はつくはずだ(I should have some idea)という発想から思考が始まるのだ。」

「未来のことは皆目わからない」と言う気持ちも分かるが、未来予測の思考を停止してはならない。

不確実要因の幅を読む流れは次の通り。
1.「これ以上になることは10に1つ、またこれ以下になることは10に1つしかない。」 この幅の中で未来を想像する。
2.両極端の値に対して、どのような状況でこういったケースが起こりうるのかということを、自分のこれまでの知識・知見と想像力を駆使して考え込む。
3.最小確率と最大確率を決める。

このプロセスを踏むことで次の機会が得られる。
1.見落としていたリスク、チャンスに気付く。
2.「楽観的1点読み」で見落としていた悲観ケースの実現性とダウンサイドリスク(損失のリスク)の大きさに気付く。
3.楽観ケースが起こりうるシナリオを考える中で、画期的な戦略代替案のヒントに気付く。

「主観的確率」を決める場合、そこで用いられる用語は定義しておかなければ、的確な共通言語とはならない。

不確実性の判断におけるバイアスとその取り除き方

主観的確率を決める時には、2つのタイプのバイアス(偏見、先入観)に十分注意しておく必要がある。
「動機バイアス」と「認識バイアス」である。

「動機バイアス」とは、専門家としてある1つの不確実要因に関する読みを行う場合、本来自分が思っていることとは違うことを言ってしまう、何らかの心理的な動機が原因となってかかってくるバイアスのことである。
「セールスマンの予測」がある。自分の売上の予測を本当の予測よりも低めに設定することである。「堅めの予測」をするときの心理に近い。
そして、「専門家の過信」がある。これは本来、幅を持って予測すべき確率を、専門家の沽券に係わるというプレッシャーから1点で決めてしまう事である。
また、「承認された数字」がある。年初に承認された売り上げ予測等を言ってしまうことが該当する。
本来求められている専門家としての知識・知見と想像力からの主観的確率を決めることが出来ない場合、専門家を変えるか、別の専門家を加えることが必要になる。

「認識バイアス」とは、「何らかのイメージとしての知識はありながら、正しく1点読みができるほどではない」というモノである。
例えば、孔子の誕生年を当てて欲しい。
この年よりも前である確率は10に1つ、この年よりも後である確率は10に1つ選んで幅として決めるなら西暦何年から何年になるか。

回答はBC551。

この誕生年が想定内であったヒトも想定外であったヒトも居るだろう。
これまで世界中でこの実験を行った。その結果、国や人種、また企業を問わず、多くの人々が10%目と90%目の数字よりも外側に正解が落ちるという現象がみられたのである。

「認識バイアス」にはどのように対処したら良いのか。

ヒトは本来、自分の持っている知識・判断よりもかなり狭めに10%目、90%目の数字を設定していまう。つまり、不確実性の幅を読む場合、幅を狭く読み過ぎていないか十分に

検討することが必要となる。
不確実性の幅を狭く読み過ぎると、リスクやチャンスを過小評価してしまう危険性を意味する。

「認識バイアス」の典型的な例として「入手可能性によるバイアス(Availability bias)」がある。
最近、知った情報、単に手に入りやすい情報が不確実性の判断に過大に影響を及ぼしていないか、常によく吟味するように気を付ける必要がある。

次に「アンカーによるバイアス(Anchoring and adjustment bias)」がある。
最初にある値を考えると、その後、考えた幅が狭めになることである。10%値と90%値を考えてから50%値を考える場合と、50%値を考えてから10%値と90%値を考える場合では前者の方が幅は広くなる。

そして「暗黙の前提によるバイアス(Implicit conditioning)」がある。
暗黙のうちにある前提を置き、その限定の中で判断するため、不確実性の幅が狭くなりすぎるというものである。

このようにさまざまなバイアスを理解して、幅が狭くなり過ぎないようにできるだけ注意深く読んでいく。その際有効なのは100に1つもない状況を両極の値として考えて、もしそういったことが起きるとしたらどういう状況が考えられるか、といったことに考えをめぐらせてみることである。

不確実性のバイアスを取り除く努力が、その情報に関する自らの考え方を深め、新たな情報収集の必要性を気付かせてくれる。
その結果出てくる不確実性の幅は、意思決定を行う上で当然重要である。しかし、その前段階で行うバイアスを取り除くための作業やプロセス自体が、思考の幅を広げたり、他のエキスパートやマネジメントとのコミュニケーションを図りやすくするために、実は非常に重要なのである。

トルネードチャート(感度分析)の考え方

重要要因の把握とそれに対する考察を行うツールにトルネードチャートがある。
これは数ある不確実要因のうち、どの項目がいま行おうとしている意思決定、対象とする事業の戦略的マネジメントにとって重要なのかを判断するために活用する。

トルネードチャートを用いて、各不確実項目のローケース(最小値:確率分布10%目の値)とハイケース(最大値:90%目の値)に不確実要因がふれた場合、他の要因についてはベースケース(基準値:50%目の値)を取っていた時に、その要因の振れによって事業価値がどの程度影響を受けるのかを調べて、その影響度が高い項目を明らかにしていく。

例えば、事業価値を予測して、競合企業数、追加製品の数、初期市場価格の最小値と最大値の幅が他の項目より大きければ、それらの項目の情報収集や分析の精度を高めることが意思決定上、重要になって来る。

「不確実要因はその影響度が項目によってさまざまである。そして、いま直面している意思決定や戦略的マネジメントにおいて、結果に大きな影響度を与える不確実項目は何であろうか」

トルネードチャートによる検討の出発点としたらこの考え方が重要となる。
また、不確実要因に関して「無知」があることを認識したら、その項目に関する情報収集や知識の蓄積を早急に行うべきである。

情報の質と量に見合った投資の意志決定とは。

投資や戦略代替案のリスク/リターンを判断するのに必要な定量的分析の出来ない程度の情報の蓄積状況では本格的な事業展開を控えるべきではないか。
それができるまでは「ビジネスR&D」として、会社の体力に見合った程度の経営資源による活動を行い、「定量的分析を行うために必要な情報と、それに値する複数の戦略代替

案のアイデアを得るための時期」とすべきである。

これは戦略の検討作業及び実行段階においてもあてはまる。
いま自分が努力して傾注している作業は、必要な経営資源を投入するにふさわしいだけの優先順位を持ったものなのか、と常に考えることが重要である。

エピローグ

皆さんは、もちろん、ここで提示されている不確実性を幅を持って評価する作業を経て意思決定されているのかもしれません。

では、「動機バイアス」、「認識バイアス」は認識されていますでしょうか。
これは「我」を客観的にどの程度認識して意思決定しているかを問うモノでもあります。

自分の状況を客観的に観れない場合、矢張り、第三者の支援が有効ではありませんか。

意思決定に精通しているヒト、マインド(脳と心)の使い方を教えてくれるヒト。
そういうヒトとの出会いがあれば、あなたの「動機バイアス」、「認識バイアス」を取り除く能力は更に高まるでしょう。

この能力の極めた結果、あなたは悟り、空を体感するのかもしれません。
いや、あなたの意思決定の質を高める先には、きっと悟りや空の体感があるのでしょう。

情報から判断基準を作り上げ、意思決定する過程で「好き、嫌い」を排除することは可能です。
事実を客観視して、あなたにとっての「意思決定の役割」、「実現の意味」、そして「理念」を結び付けて下さい。
そこでは、「好き、嫌い」は介在していない筈です。
あなたの意思決定の過程であなたにとっての「意思決定の役割」、「実現の意味」、「理念」を意識して、個人としてそしてチームとしての「予測とプレー」の精度の向上に役立てましょう。

あなたの「動機バイアス」、「認識バイアス」はどこから来ているのでしょうか?

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