有用かつ信頼性の高い情報-不確実性の認識の取り扱い方および意思決定の視点からの重要要因の絞り込み by 籠屋邦夫さん
理念を磨け、新たな価値の連鎖を生み出せ。あなたの意思決定の質を高める、意思決定スタイリストのSHIMOMUJRA Takujiです。
あなたの意思決定の質を高める過程で「理念」、「これから実現することの意味」を鮮明にしていくことは必然になります。
プロローグ
私は大学院で「意思決定論」を籠屋邦夫さんから学びました。籠屋さんはスタンフォード大学でハワード教授から意思決定理論を学ばれ、ハワード教授の主催するコンサルティンググループでコンサルティングをご経験。帰国後、デシジョンマインド社の代表を勤められています。
「ディシジョンマインド」とは、「自らの意思と能力で未来を切り拓こうとする気構え」です。
今回は、籠屋さんの著書「意思決定の理論と技法 未来の可能性を最大化する」より、「有用かつ信頼性の高い情報-不確実性の認識の取り扱い方および意思決定の視点からの重要要因の絞り込み」のEssenseを私の視点でまとめました。
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意思決定のための情報
意思決定に有用な情報に焦点を当てる。
必要なのは、複数の戦略代替案を創造するためのヒントとなる情報、そして各戦略代替案を選択した場合、それぞれの未来における結果がどうなるかを見極めるのに役立つ情報である。
「過去に関するデータ」ではなく「未来に関する情報」
「過去に関するデータ」をいくら集めても、事業環境としてどのようなトレンドを見出すかまでの分析がなければ、そこから「未来に関する情報」は得られない。
効率的情報収集・統合作業。
避けるべき戦略立案アプローチは、重要なものとそうでないものの区別をつけず、あらゆる項目について情報を集めることである。その結果、情報収集に膨大な時間を要し、肝心の戦略代替案の創造、複数の戦略代替案のリスク/リターンの比較検討、新たな戦略提案の策定という最も重要な時間が足りなくなることである。
「意思決定のための情報に焦点を当てる」 有効な3つの問い。
1.我々はいま、どのような枠組みの下で意思決定を考えるべきであろうか。そして、我々が収集しようとしている情報は、問題をその枠組みに沿って理解するうえで実際の役に立つだろうか。役立つとしたら、どのように役立つのだろうか。
2.集めた情報は、複数の戦略代替案の取捨選択を行うとき、どのような形で役立つであろうか。
3.追加的に情報を集めるとしたら、それはどのような事柄についてであり、それによって得られる追加的情報の価値は、そのために必要となる努力とコストははたして見合うだろうか。
未来情報に関する不確実性の認識の仕方-「当てる」ことよりコミュニケートすることが大事
未来情報:将来起こることに100%確実なことは何ひとつない-「1点読み」の危険性。
1点読みの場合、楽観的な数字が並んでいることが多く、望ましくない事態が発生した時、素早いアクションがとれないことがある。
「未来を読む」ための努力:「曇ったフロントガラス」と「きれいなバックミラー」
誰も未来のことを確実に知ることはできない。しかし、知るための努力をする意志とそれを実行に移す能力を持った人には、ある程度の精度で未来の事象を予測・判断することができる(デシジョン・マインドの考え方)。
「堅めの予測」の危なさその分野を正確に予測する専門家は必要。社内に居ないのであれば、外部から連れてくる、若しくは、社内に専門家を育てることが必要。「堅めの予測」は、これから意思決定を行う事業の魅力度の低下を招くことを忘れてはならない。「堅めの予測」がプロジェクトや事業を打ち切る原因となる可能性もある。
「暇な釣り人症候群」の回避:コミュニケーションにより未来への判断を共有化・深化させる努力
この症候群は「見ようとしても正確にはわからないのだから、そこまで考えなくてもいい」という心的態度のことである。
はたして釣糸を垂れる価値のある場所なのか(テーマの分野として価値や見込みのあるものなのか)、いまの糸や針、仕掛けで本当に良いのか(いまのアプローチが最適なのか)といった不確実な事柄に対し、わかろうとする努力が必要である。
だれも未来のことは分からないのは確か。それを前提に、各関係者間で互いに分かり合える形でコミュニケ―トし、共有化し、深化させていくことが重要。想像力とロジックを車の両輪として、グループとしてのコミュニケーションによって思考を深化させる。ひいては創造性や先見性に通じる。
未来の不確実性についてコミュニケーションを行うときには、不確実要因に対する判断に明晰さや深みを持たせるほうが、正確な1点を予測するよりも重要である。
重要要因の把握とそれに対する考察の傾注
情報や検討項目に関する優先順位づけの発想。
定性的な議論では重要な視点が見落とされがちになる。意思決定の際にはおおまかな定量的検討に基づいて、重要なモノの優先順位を明確にする必要がある。そして、重要なモノの情報の精度を高める努力をすべきなのである。
戦略の検討や事業運営における経営資源の有効活用:「王者の戦略」による没落。
競合企業に対する体力、知力の差を考慮して、経営資源の有効活用に意識を向けるべきである。
「シーズ志向」vs「ニーズ志向」:得意顧客分野の絞り込みと、それによる知識・情報の蓄積の加速と深化
「シーズ志向」のR&Dの場合、マーケットを最初から特定して考えることがない。この場合、ある程度マーケットの領域を絞り、そこから外れる場合、対象領域に強い企業にライセンスアウトする方策も必要となる。
「戦略とは重要でないものを捨てることである。」 物事や必要情報に対する優先順位の発想がないと、時間と労力の浪費につながる恐れがある。
エピローグ
継続した方向性の元に意思決定することを前提に考えます。
将来の組織と今の組織の両者にとって最高の意思決定をしましょう。
そのためには、将来の組織と今の組織の共通部分を認識することが有効です。
それは、一般的には「理念」として語られています。
これは、個人で活動する時も組織で活動する時も有効なフレーム(思考の枠組み)です。
個人の場合、「理念」が思い浮かばなければ、あなたの「在り方」を当てはめてみて下さい。
そして、意思決定の結果それを実行して実現することを、それまでの経過とそれ以降の予測に基づきどう意味付けるか。
「理念」、「実現(output)の意味(outcome)」を与件(デシジョン・ヒエラルキーにおけるpolicy;「的確な考え方のフレーム設定-的確なフレームづくりのための基本コンセプト」参照)にすることをお勧めします。
この2つを明確に表現できれば、不確実要因の優先順位、すなわち重要要因の絞り込みは比較的簡単にできます。
あなたの意思決定の質を高める過程で「理念」、「これから実現することの意味」を鮮明にしていくことは必然になります。
今、必要な有用かつ信頼性の高い情報は何か。それを常に意識して行動すれば「理念」、「実現の意味」は徐々に鮮明になります。それは「予測とプレー」の精度の向上に相関します。
あなたの意識を「理念」と「実現の意味」に向けて、個人としてそしてチームとしての「予測とプレー」の精度の向上に役立てましょう。
あなたの、今の価値と最終的な人生の価値を同時に高めるための理念は、どんな理念ですか?
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