的確な考え方のフレーム設定-的確なフレームづくりのための基本コンセプト 籠屋邦夫さん
2014/05/27
理念を磨け、新たな価値の連鎖を生み出せ、意思決定スタイリストのSHIMOMUJRA Takujiです。
フレーミングは意思決定におけるのチームの共通目的を明確にして、メンバーの貢献意欲を掻き立てるコミュニケーションそのものです。
プロローグ
私は大学院で「意思決定論」を籠屋邦夫さんから学びました。籠屋さんはスタンフォード大学でハワード教授から意思決定理論を学ばれ、ハワード教授の主催するコンサルティンググループでコンサルティングをご経験。帰国後、デシジョンマインド社の代表を勤められています。
「ディシジョンマインド」とは、「自らの意思と能力で未来を切り拓こうとする気構え」です。
今回は、籠屋さんの著書「意思決定の理論と技法 未来の可能性を最大化する」より、「的確な考え方のフレーム設定-的確なフレームづくりのための基本コンセプト」のEssenseを私の視点でまとめました。
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デシジョンマインドのための基本コンセプト
的確な考え方のフレーム設定-フレームとは何か
複数機能のチームから成る適切なメンバーの巻き込み
複数機能の視点を交えて、各自の「暗黙の前提」「暗黙のフレーム」を掘り起し、課題に取り組む前提を新しく構築し、フレームを共有化する。
知らず知らずのうちに身に付いた習慣的なモノの見方の限界を打破するためには、複数の機能、経験の多寡、賛成・反対・懐疑といった意味での参加メンバーのミックスが有効。
ビジョン・ステートメントによる目的と切り口の共有化
適切な切り口を発見し、また共有化するために、ビジョン・ステートメントが有効である。
次の質問に対して、既述の複数機能から成るチームが答えて作成する。
・これから何をしようとしているのか(What)
・なぜこれをやろうとしているのか(Why)
・成功したかどうかは何によってわかるのか(Success Measures)
4番目の質問「この検討が失敗するとしたらどのような場合か、それは何が原因か(How could we fail?)」を加えると、失敗を未然に防ぐための検討プロセスを設計し、運営するというリスク・マネジメントに有効となる。
イシュー・レイジングによる論点の洗い出し
チームで検討にあたって考えるべき論点を抽出することで、メンバーの相互理解、共通目的、そして貢献意欲を醸成する。
イシュー・レイジングの対象は。意思決定/戦略的マネジメント課題に関して重要なことはすべてである。意思決定項目、不確実性要因、価値判断基準、SWOTs等。
1人1項目ずつ、順番にイシューを抽出する。イシューが出尽くしたら、最後に全員が各自重要と判断するイシューを、N(イシューの総数)/3の数だけ投票する。各イシューへの投票数からイシューの優先順位づけを行い、優先度の高いイシューを特定する。
優先度の高いイシューを「意思決定事項ないし戦略代替案のヒント」「不確実要因に関するもの」「価値判断基準に関するもの」に分類して、後の課題解決策立案の材料とする。
メンバーの見方が細かい部分、短期的な症状、狭い見方に偏っている時はバックキャスティングを利用して、大きな視点、長期的な視点からもイシューを抽出するようにファシリテートする。例えば、5年、10年先に失敗した状態を想定し、将来から現在までバックしてそうなった原因を想定する作業である。成功した状態の想定も役立つ。
複数あるイシューに対して、少数のチャレンジで対応することを検討する。集約されたチャレンジを使って、戦略代替案を作りだす。
フォース・フィールド・ダイアグラムを活用した論点の明確化
Go/No Go的な意思決定におけるイシュー・レイジングにはフォース・フィールド・ダイアグラムを活用する。問題を建設的に解決する心の準備を行う作業でもある。
1枚の紙を左右に分ける。左側に推進するための論拠、意見、主張を記述。右側に反対するための論拠、意見、主張を記述。チームメンバーを一堂に会して行う。逆サイドの考え方をしてもらい、各人の頭の中のバランスを取る。賛成派は反対側の意見を抽出。反対派は賛成側の意見を抽出。建設的な論点の抽出と「ガス抜き」効果がある。
この結果には不確実要因と価値判断基準に関する項目、意思決定項目や戦略オプションへのヒントが含まれている。
デシジョン・ヒエラルキーによる、検討範囲と焦点の明確化
デシジョン・ヒエラルキーにより、検討すべき意思決定の範囲を明確にする。
それは段階的に行う。最初にポリシーレベルの政策的意思決定項目、次に戦略レベルの戦略的意思決定項目、最後に戦術レベルの戦術的意思決定項目である。
政策的意思決定項目:与件・前提条件 ここは変えることはできない。
戦略的意思決定項目:今回の検討・分析対象項目
戦術的意思決定項目:詳細な検討は戦略的意思決定のあとにまわすべき項目-今回は仮設定
デシジョン・ヒエラルキーの検証は、意思決定の質の潜在的な障害を見つける手段の一つでもある。
例えば、ポリシーレベルの意思決定事項が硬直的・限定的だと、創造的な選択肢を制限する。戦略レベルの意思決定項目が多すぎたり、少なすぎたりすると、意思決定の範囲が適切でなくなる。
フレームのEssence
著者が経験したフレームの変更
・フレームの拡大(例:工場の立地候補場所をより広範囲に設定し直した)
・新たなフレーム(例:新製品開発のテーマから、次世代技術開発のテーマへ)
デシジョン・マネジメントの考え方の創始者 スタンフォード大学 ロナルド・ハワード教授の言葉
「フレーミング(枠組み作り)は、この方法論を用いたプロセスの中で最も難しい部分である。それは、きわめて人間的な、まさしく人間にしかできない深い洞察力を必要とする作業なのである」
エピローグ
フレーミングの最終的なoutputはデシジョン・ヒエラルキーです。
これを作り上げる過程で、その後関与することになるメンバーのコミットメントとその質が問われます。
それは、デシジョン・ヒエラルキーに重要事項が含まれていないと、そのプロジェクトは振出に戻りかねないからです。
デシジョン・ヒエラルキーにはBackgroundがあります。そのBackgroundには課題のWhy, What, Success measure(ビジョン・ステートメント)を軸とした課題の抽出(イシュー・レイジング)、幾つかの解決策の提示(チャレンジ)、課題を解決する上での利点と欠点の抽出(フォース・フィールド・ダイアグラム)があります。全ての過程でメンバーのコミットメントとその質が問われます。
つまり、フレーミングは意思決定におけるのチームの共通目的を明確にして、メンバーの貢献意欲を掻き立てるコミュニケーションそのものです。
不測の事態への対応。これがあなたのフレーミングの質が最も問われる場面です。
普段から不測の事態に備えて、各機能の key person は誰に成るのかを知っておく。不足の事態の発生直後には、原因の特定と対応に向けて意思決定するために、メンバーを決めて、必要な情報の key word, key source を特定しなければなりません。これはフレーミングそのものです。出来上がったデシジョン・ヒエラルキーの質と、解決までに必要な資源の量は反比例の関係になります。フレーミングを完了するための戦略的マネジメントとオペレーショナル・マネジメントの一連の思考と行動のスピードが、不測の事態に効果的に対応する鍵です。
フレーミングの質を高め、チームとしての「予測とプレー」の精度の向上に役立てましょう。
あなたにとって、フレーミングの能力を向上させるための key word は何ですか?
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