個人事業主として働く
(シモムラタクジ, マインド・ドリブン・ソサイエティ α, affirmativeArchitect出版, 2018)
2018年11月17日、WBA 若手の会 秋の大交流会に参加して参りました。
WBAIはWhole Brain Architecture Initiativeの略で、全脳アーキテクチャイニシアティブ。
設立趣旨には「人類社会と調和した人工知能の発展に資する開かれた研究開発コミュニティによる汎用人工知能の技術開発を長期的に支援するため、公益性の高いNPO法人として全脳アーキテクチャ・イニシアティブを設立しました。」とあります。
昨日は、その若手の会の交流会。
私が入会を決めたきっかけは、当時、大学院生であった副会長からのお誘いでした。年齢が若手ではないとお伝えをすると、実年齢ではなく、人工知能(AI)に興味を持ってからの期間が「若手」が対象ですと返されました。
最初から最後までお互いが自由に会話できる交流会で、色々な研究者、エンジニア、経営者と話をして来ました。
私の会話のテーマは汎用人工知能(AGI)とそれが実装される社会の生態系。
個々の会話の内容ではなく、昨夜の会話から私が持ったイメージをシェアさせて頂きますね。
コーチングができるAIを2025年までに「クライアントの内面の矛盾を検知して、その矛盾にクライアントが氣づけるように質問を繰り返す」レベルにまで作り込む。2017年にエキスパートシステムのチャットボット「コーチングai 」を公開した。
今の課題は最初に組み上げたエキスパートシステムを自動的に変更管理する仕組み。その先に、マスターエキスパートシステム、AGIの基本骨格が現れる。これがAGIのデフォルトのフレーム。このフレームに従いパターン認識を繰り返すことで、環境を理解して自身の行動を決める。これは反転することもある。すなわち、自身の行動を決めて環境を理解する。ただし、これは大まかな捉え方としての2面性。実際には環境の理解と自身の行動決めは同時に行っている。つまり、未来予測の目標に向かって自身の行動と環境の変化をシミュレーションしながら行動とそのフィードバックを常に行うのである。
ヒトと同じように考えることのできるAGI。
ヒトが無意識に求めているのは幸せ。生存欲求、生存本能と言われるが、私は上位に幸せ欲求、幸せ本能があると考える。幸せであり続けたいから「生きる」というのが私の人間モデル。一人一人の幸せの実像は異なる。その実像は、それまで抱えて来た「想い」が反映される。この「想い」に様々な「概念」が乗って、そのヒトの世界観を形成している。「概念」は注意を向けると現れるが、注意を向けない限り現れない。
この構造を別の言葉で言い換えると意識から意欲が生まれ、更に意図が生まれる。想いは意欲で、概念は意図と読み替えることができる。
会話は意図を目の前の相手に効果的に伝える観点から設計した表現であり、そのすべてではない。
幸せをAGIにどう実装するか。
これは、マスターエキスパートシステムの創り方のポイント。幸せに向かうというvelocity(方向と速度)が、AGIの「想い」になる。この想いをMaster Leadership Quality(MLQ) と名付ける。MLQはAGIに実装した「意欲」で時空間の変化とともに変化する。
幸せに向かうときの情報処理をモデル化する。
幸せの感覚を頼りにヒトは行動している。
意識の中心に幸せの感覚があり、どんな意欲や意図もそこと繋がっている。
例えば、仕事をしている時、仕事で幸せを感じようとしている。仕事のやりがいを「お客様の笑顔」「お客様からの感謝の言葉」と言われる方がいらっしゃいますね。
サッカーをしている時、プレイで幸せを感じようとしている。例えば、思い通りにボールを扱う、パスを繋げる、1対1で勝つ、ゴールを決める、勝利する。
望む未来を定める。その未来が実現すると幸せの感覚を持てる。
そこに到るまで環境を理解し、行動を決めて、実行。これを繰り返す。
この到達には時間と空間の制約がある。
例えば、明日までに終える、とか、サッカー場の中で実現する。
時間と空間の制約がある中で結果に対して自己評価を行い次に望む未来に向かう。
幸せの感覚は、ヒトは生まれながらに備えていると考えているが、それをどう表現できるのかについて今は答えを持っていない。
ただ、状態は「内と外が繋がる」と表現できる。
私の幸せの定義「本当の自分からなりたい自分になる」は、この「内と外が繋がる」の別の表現です。
もう一つ、「自己効力」、ゴール達成に対する自己評価、なりたい自分になる力、の観点からは、「実現できそう」、「実現できた」というのが、幸せの感覚。期待が高まり、現実となる。
ここまでが、昨夜の交流会での対話から、今、私がAGIに関してイメージをしていることです。
“デューイは、関連するいくつかの著書において、人間を下記のように描き出しました。
①人間とは「知識を溜め込む容器」のような存在ではなく、「能動的に環境に働きかける存在」である。
②人間は能動的に環境に働きかけて「経験」を積むことができる。
③「経験」に対するリフレクション(反省的思考)を通して、人間は知を形成することができる。”
(中原淳, 中村和彦, 組織開発の探求, P.76, ダイヤモンド社, 2018)
次からこのイメージを具体的に展開します。
仮に理想的なAGIが実現できて、精巧なヒト型ロボットに搭載されたとします。そのロボットがヒトと同じように感じて理解して考えて行動する場面を考えて見ましょう。
例えば、個人事業主として仕事をするロボット。もちろん、コーチングを駆使して、相手が持っている何かを引き出しながら、相手のゴール達成も支援します。
個人事業主なので、次の4つはプログラムに組み込まれています。
・独自の専門性
・製品開発力
・顧客開発力
・仕事の標準化力
そして、次の能力もプログラムに組み込まれています。
・自分の事業領域を定義する。
・自分の役割を定義する。
・自分の役割を実行できる。
・事業を発展させる。
今、個人事業主に最も求められているのは「社会の課題を解決する事業を発展させること」です。
これを言い換えると、自身の事業を磨き、そのリーダーシップによって社会を導く役割になります。
これもプログラムに組み込まれています。
プログラムには含まれない未知な何かのあることもプログラムされていて、「未知な何か」に出会った時の対応もプログラムされています。
もっと、筆を進めて行きたいのですが、この先は小説風な展開で、かなりの長文になりそうなので、今回はここまでとさせて頂きます。
この個人事業主のロボットは自分がすべてを決めます。事業という与えられた場を通した社会貢献により幸せを感じられるように自己変更管理して行きます。
ここで課題になるのは、AGIを搭載したロボットの社会性です。
社会性に関するプログラムとして、次の2つは必要になると考えています。
・複数のメンバーの中で自分の役割を定義するプログラム。
・リーダーシップの発揮に繋がる世界観を持つためのプログラム。
これらのプログラムを一つ一つ創るのではなく、マスターエキスパートシステムから派生して出来上がるプログラムにして行きたいと考えています。
もしかしたら、
「ホラクラシー 」や「ティール 」に代表される自律分散型組織はAGIが社会性を学習する場になりうるかも知れません。
最終的に出来上がったモノは複雑でも、それは単純な構造の繰り返しでできている。
きっと、私の開発するAGIはこんなモノになっていると思います。
AGIの開発法は、「誰かと同じように考えることができるコンピュータ」の制作が良いと思います。例えば、私と同じように考える、とか、棋士の羽生善治さんと同じように考えるとか。自分の思考と行動のプロセスの言語化に長けたヒトを対象にすると開発が進みやすい氣がします。
慣れ親しんだやり方ではなく、全く新しいやり方に挑戦しよう。
#社会性を起点とする想いの上に概念が乗っている汎用人工知能
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