学習の記録 円の支配者(2001)
2025年12月7日開始
リチャード・A・ヴェルナー(Richard A. Werner)著, 吉田利子訳, 円の支配者(Princes of the Yen), 草思社(2001)
はじめに=Background
本学習の記録は人類の戦争文化を人類本来の平和文化に回帰するためのコミュニケーションツール。
本日(20251207)、独立系ジャーナリストのタッカーカールソンさんが出演しているショート動画を視聴。
対談の相手はリチャード・A・ヴェルナーさん。
対談の内容が日本のバブルの崩壊は、意図的に実行されたこと。その主体が日本銀行であるとの内容だった。
そこで、ヴェルナーさんの著作を調べて標題の書籍を見つけた。
昭和の最後、日本人が体験したバブルの崩壊。
この事件と(債務貨幣制度の海に浮かぶ企業社会主義社会のバブル)との関係を推論する。

成果=Output
表紙裏のはじがきより
「政府が景気回復に向けて必死の努力を重ねていた時、なんと日銀は信用を収縮させ、景気の回復を故意に遅らせたのである。」
はじまり
大蔵省落城
構造改革
平時の日本の歴史において目にあまる経済政策の失敗は大蔵省にあるのが一般的な見方。1980年台のバブルの崩壊と1990年台の長期不況。
1990年台日本の中央銀行の幹部はほとんど毎日アメリカ流の資本主義の導入を唱える。日本流の資本主義を捨てる必要があるのか疑問。
1990年台の不況時より1980年台の経済体制の方が閉鎖的。50年台、60年台もそう。同じ構造でも成長率は高くも低くもなる。
本書では不況はお金の量が原因であることを示す。すなわち、バブルの崩壊とその後長年続く不況の原因は日本の中央銀行、日本銀行にある。
経済構造の改革論者が日本でお金を支配していた当人だった。
日銀は日本の市場にお金を供給しなかった。
日銀は資金需要がなかったと主張。これは嘘。政府部門は財政支出を賄うお金が必要。日銀は主としてお金を注ぎ込んだのはごく狭い短期金融市場。ここには銀行のみがアクセスできて、企業、政府は手を出せない。不良債権の重荷を背負った銀行は規模が大きくてリスクの低い借り手にしかお金を貸したくなかった。したがって、中小企業にはお金が行き渡らなかった。
2001年3月19日 思い切った(量的)金融緩和 銀行の準備預金を4兆円から5兆円に増額を約束。これは日本経済に何の益もない。経済に回るお金は増えていない。
「日銀は必要と判断したら長期国債の買い入れを増額」 高い失業率を記録したこの10年、日銀はいつでも国債の買い入れを増やせた。日銀はそれを必要とは判断しなかった。
「政府の強力なリーダーシップの下で、痛みを伴う構造改革が必要」
コメント1″痛みを伴う構造改革とは中小企業の廃業。これは、COVID19事件における経済活動自粛要請による中小事業者の廃業、インボイス制度による中小事業者の廃業。漁業や農業の補助金カットによる中小事業者の廃業。その後に株式会社が参入できる法律に変えて外資が市場に入り込み、日本人を安い労働力で働かせる。米国における企業の利益の9割以上が株主に渡す法律改正に日本も追随している。”
現実に目覚めよう
デフレが広がることで金融政策が長期不況の原因だと気づく人が増える。
十分なお金を創り出して実際の成長率を潜在成長率に近づけてインフレにもデフレにもならないようにするのは中央銀行の仕事。
日銀はデフレは好ましいと主張する。お金を創りデフレギャップを縮小させることが可能。
日銀は無能。人類史を振り返ると過去の信用収縮に起因する危機を乗り越えている。
2001年現在、中央銀行には過去より多くの選択肢がある。企業のコマーシャルペーパーの購入。政府にお金を貸す、債券をもっと買う。不動産を買って公園にする。お金を市民に配る。これらは国内の購買力を増す。
傲慢な日銀
日本は1990年台を通じて高度成長できたはず。日銀が望めば。
「大事なことは、一時的な経済成長率の引き上げを目指すのではなく、腰を据えて構造的課題の解決に取り組むことではないかと思います。」
政府の蔵相や首相のお金をもっと発行する要望に日銀は拒絶。
90年台、政府が景気を回復する試みを積極的に妨害。
1995、1997、1999年の重要な節目で日銀は経済に流通するお金を減らした。政府の通貨介入政策は効果を失い、円高に振れて景気回復の芽を潰された。
日銀のせいで日本はどの先進国よりも多額な債務を抱えることになった。
1998年3月31日まで施行されていた旧日銀法第1条は中央銀行は政府の政策を支えなければならい。つまり、日銀は違法な組織。
不況を長引かせてきた張本人が1980年台のバブルを生み出した。
1992年日銀研究員「もっとたくさんのお金を作ったら、景気は回復するでしょう。だが、それでは何も変化しないでしょう。日本の構造問題は解決しないのですよ。」
日銀の興隆
2000年の大晦日、大蔵省は敗者、日銀は勝者。新たに設立された金融庁には日銀OBがいた。金融政策を大蔵省から分離して金融庁の権限に。
1997年、橋本首相の行政改革に日銀法改正が含まれていた。新日銀法は国民のためにならない。著者は日本の国会議員にメッセージを送り日銀法改正反対の主旨を伝えた。どの党も改正に賛成だった。衆議院を通過後、共産党だけが参議院で反対。
政府は金融政策をコントロールできなくなった。
2001年の初めに株価が下がった。多くの政治家は日銀総裁の退陣を迫った。
速水総裁「雇用調整、人員の再配置など、いずれも、これまでの経済や社会の仕組みの見直しを迫るものであります。その過程では様々な痛みが伴うことは避けられません。」つまり、日本人は終身雇用を諦め、雇用の不安定化という現実に直面すべきだと主張している。
一方、日銀総裁の雇用は安定している。本人が自発的に辞任しない限り、政府は首に出来ない。新しい日銀法では中央銀行は健やかな経済成長を達成すべきと記されていない。
日銀を立ち入り調査する権限を政府は持たない。日銀は法律を超越し、民主的機関を超越している。景気が良くなる悪くなるを決定するのは政府ではなく日銀。
セントラルバンカーとは何者か?
日銀総裁は表の顔。真の運営者の看板。
日本の最高職、日銀指導者は次期総裁予測に不確定要素はない。
速水総裁の次は福井総裁。
遡れば、三重野総裁、前川総裁、佐々木総裁もマスコミの予想通りだった。
本書ではこの四人には多くの共通点を明らかにしている。全員揃って経済同友会で主導的な役割を果たした。経済同友会は1970年台から日本の経済構造を根本的に改革すべきと主張してきた。
支配者たち
日銀総裁が選ばれる過程は不透明。日本国民はその理由を知らない。日銀総裁は王位継承者。日本の不況が長引いたのは偶然ではない。政策の誤りが続いてせいではない。バブルの生成も偶然ではない。アメリカは金利を引き上げ、バブルを回避するように言ってきた。しかし、日銀はそれをしなかった。支配者たちの計画にバブルの生成は必要だった。
背後に蠢く黒い影
戦後50年間、日本の首相は26人。この中で経済の核心、すなわち日本の通貨を支配していた人物の数はずっと少ない。表に出てこないセントラルバンカーが日本の戦後史を画する重大な出来事を形作ってきた。
大蔵省が戦後日本の経済体制を維持しようと腐心している時、日銀は大蔵省に従属的な地位だった。中央銀行は1920年台日本に見られたアメリカ流のの自由市場体制を復活させ、大蔵省から自由になろうとしていた。この当時でさえ、法的には大蔵省優位だが、実質的には中央銀行の持ち札の方が強力。法律外の信用統制メカニズムを握っていた。企業、産業全体の、そして、大きくは経済全体の生殺与奪の権があった。戦後日本を支配した5人のプリンスたちは伝統的な金利政策という煙幕の陰に隠れ、誰も責任を負っていない。
プリンスたちは大蔵省の強大な法的権力を覆すには大規模な危機しかないと考えた。大蔵省の責任だと非難が集中する危険。この10年計画を1986年から10年計画を実行。貸し出しを大幅に増加することを銀行に指示。中央銀行からの厳しい処罰の脅し。銀行は従った。バブル生成の責任は不動産投機家と銀行、大蔵省。1989年、プリンスたちはバブルが十分に大きくなったと考え、信用統制をきつくした。経済の崩壊。1990年台、プリンスは景気回復の政策を妨害、1930年台以来の深刻な不況を長引かせた。
プリンスは失業の増加、不況のせいで記録的な高さになった自殺率も意に介さず。12年間で達成。1998年大蔵省解体。日銀は独立。強大な権力は合法。ビッグバンと呼ばれた金融改革は日本の経済構造を変質。アメリカ流の経済体制が導入されつつある。
どうすればいいのか
日銀の権力が放置されればいつまでも景気を後退させる。
本書は中央銀行の役割に関する幅広い議論が起こり、日銀の過去の政策と意思決定について、司法関係者を含めた独立した委員会による精査が行われることを願う。立法府の議員には日銀法改正が過ちであることに気づいてほしい。直ちに日銀法を再改正して、国民から選出された代表者が金融政策の舵取りを行うべき。そうすれば意図的な不況の長期化は防げる。
暫定的な政策は議会が日銀が達成すべき国内総生産の名目成長率を設定し、それを達成できない場合日銀のトップ1/3をクビにする。これは速水総裁が主張した衆院雇用廃止、実績に基づく労働市場を導入する構造改革を日銀が実行することになる。
プリンスたちは大幅な構造改革を実行し、自らの法的権限を拡大するために経済を大混乱に陥れた。これは国民の利益になっていない。
第1章 マネーのプリンスたち
日本の新時代の幕開け
近代日本は社会システムに根本的な変化が2度起きた。
19世紀末明治時代、1940年の戦争と敗戦
戦後復興は量的な変化であり、それ以前に確立されていた経済的、政治的機構に変化はなかった。
日本は2001年、アメリカ型の自由市場経済に移行しようとしている。
バックトゥザ・フューチャー
これから突入するアメリカ型自由市場経済はかつて日本も1920年台に経験していた。
ところが、戦後の日本はまるで正反対の体制になっていた。厳しい規制、競争を制限するカルテルと系列、銀行融資と株の持ち合いによる株主権力の低下、企業買収は皆無、終身雇用と年功賃金で労働市場は凍結状態。
自由市場のみが反映するという理論に反した日本の経済発展の謎を解明しようとしてきた。
戦時経済
日本を変えたのは産出高の最大化を目指す戦時経済だった。
日本企業は1940年台初めからずーっと戦時体制。冷戦の始まりと共にアメリカは日本の戦時体制を維持して戦争中のエリートに権力を握らせた。
ドイツの戦時経済担当相は戦争犯罪人として死亡。一方、日本では同じ地位にあった官僚は首相となり、弟と共に12年も重要な時期の日本を支配。資源の迅速な動員のために作られた戦時の「総力戦経済体制」を完成。この強化をアメリカは選択した。
日本経済を支配してきたのは(産業界, 政治家, 官僚)のゴールデントライアングルではなく(大蔵省, 通産省, 日本銀行)という小さなトライアングル。
日本銀行はこの小さなトライアングルの中で隠れていた。本書では日銀が実は権力を持ち、利用、乱用してきたことを示す。
高度成長を実現した政府介入
現在の有職者にとって経済的成功と自由市場経済は同義語。途上国は(世界銀行, 国際通貨基金(IMF))から(自由化, 民営化, 規制緩和)による経済開発を要求される。
コメント2”ここに示されているのは新自由主義の主張。日本ではバブルの崩壊が政治の責任だと言われていて、日銀責任説はこれまで聞いたことはない。私の推論、(債務貨幣制度の海に浮かぶ企業社会主義社会のバブル)がバブルを生成し、バブルを崩壊し、外から日本市場に参入できない構造を変えた。その債務貨幣経済はドルのデフォルトにより崩壊しそう。ここには示されていないがBISが世界銀行とIMFの上位にある。”
東西冷戦の終焉は共産主義国家の経済体制に自由市場体制が勝利したという文脈で語られるが、日本経済は自由市場のお陰で世界第2位の経済大国になったのではない。これは競合するもう一つの資本主義経済体制が存在することを意味する。
コメント3”米国の資本主義は戦争文化の経済。日本の資本主義は平和文化の経済。米国の市場は軍需産業が牽引した。これは今の中国にも当てはまる。どちらも貧富の差を拡大する。一方、日本の平和文化の経済はみんなで裕福になる経済。これは戦争文化が導き出した経済の体制による帰結ではない。”
日本の経済は計画経済国家と違ってミクロの経済運営ではない。戦時下の日本の官僚は高度成長に最適な構造を目的として制度的構図を作った。そこに介入。政府介入は組織的構図作りでは上手くいくが誰が勝者になるのを決めることはうまくいかない。
制度の構図
戦時経済の指導者は大企業の創出を促した。大企業の利害関係者(経営者, 株主, 従業員)のうち、高度成長を目指す為政者の目標にぶつかるのは株主。株主を排除し、経営者の地位を向上。企業組合、年功序列、終身雇用で従業員を動機づけた。
コメント3”従業員の動機づけは社会主義に近い。企業組合は資本主義の産物。ただし、同じ仕事をしているのに給料の多少が起きることへの納得感を醸成するのが難しい。これは年長者を敬う文化によってコントロールした。”
株式の持ち合いは経営者を株主への配当優先圧力から解放した。
第2章 戦時経済
第3章 戦後、いっそう強固になった戦時経済体制
第4章 銀行業という錬金術
第5章 信用創造ー経済の総司令部
第6章 窓口指導と日本の覇権をめぐる争い
第7章 実験ー日本の最初のバブル経済
第8章 マネーのミステリー円の潮流
第9章 円の大幻想ー信用のバブルとバブルの崩壊
第10章 不況を長引かせる法
第11章 大蔵省と日銀の「バトル・オブ・YEN」
第12章 銃の引き金を引いたのは
第13章 円のプリンスたち
第14章 日本改造10年計画
第15章 もうひとつの奇跡
第16章 景気扶養ー回復は始まっている
第17章 アジアープリンスたちのつぎの仕事場
第18章 セントラル・バンカーが暮らしを支配する
第19章 アラン・グリーン・スパンの秘密
謝辞
裏表紙
「これは論争の種になりそうな本だが、次の理由から本書を推奨したい。日本銀行の歴史については著名な本が何冊かあるが、いずれも1960年代に出版されたものであり、バブル期とそれ以降の経済については書かれていない。『円の支配者』の特徴は、現在の視点で日銀の歴史を取り上げる最初の試みだと言うことである。本書は研究者、実務家双方の大きな関心を引くに違いない。(東京大学経済学部教授:専攻=経済史 岡崎哲二氏」
岡崎哲二さんの経歴
おわりに=Outcome
それから=OnGoingAction
変更管理
学習終了まで記録しない
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