人財育成のモデル by T. S.
2014/03/30
皆さん、こんにちは。あなたの理念の体現を支援する SHIMOMURA Takuji です。
「人財育成とはコーチングそのものです。そこには5つの観点があります。」
プロローグ
本日から大学入試センターのセンター試験が始まります。私が受験した当時は共通一次試験と呼ばれていました。国公立大学の受験生は当時も必ず受験していました。私立大学もかなりの数の大学が参加していますが、当時は、一校のみの参加でした。
当時は、私も「入学した大学で(ある程度)就職先が決まり、その会社で定年を迎える」と思っていました。
私が社会人になってから四半世紀が立ちました。この間、社会は大きく変化しました。
この変化に日本は上手く対応しているのでしょうか。少なくとも私は変化への対応には改善の余地はあると考えています。
今回私は、環境の変化に迅速に対応できる人財の育成モデルを提言します。
なお、個人の動機も変化します。外部環境には変化がなくても、個人の動機が変化した場合、それに対応することもあります。
この提言は個人の動機の変化にも応用できると考えています。
環境の変化 仮説
これから先は、私のBackgroundから導き出した仮説です。
短く表現すれば、「世界は小さくなり、環境の変化は加速している」です。
世界は小さくなり とは
SNSを含むICTの発達により、情報伝達は高速化する一方です。その結果、個人や組織が広範囲のネットワークを形成しやすくなって来ています。これはGAPの感受性が個人や組織のあり方に影響が出やすくなって来ていることを意味しています。何故ならGAPの感受性が行動を惹起するからです。感受性が高くなれば変化への行動が増えます。行動量の差は、経験値の差となり、そのまま決断力の差に繋がります。この傾向はますます顕著になって来ています。
環境の変化は加速している とは
世界が小さくなり、情報伝達が高速化することで、行動を変える意思決定の場面が増えました。その結果として行動を変えた個人や組織の影響を受ける個人や組織が増え、その頻度が増えてきています。
環境の変化 実感
「世界は小さくなり、環境の変化は加速している」 交通網が発達し、移動の時間が短縮。SNSを通じてネットワークを形成し情報を共有化。デジタル機器が発達し、個人が望めば常に情報収集して思考と行動の量を増やすことが可能になりました。個人は単純作業を機械やコンピュータに任せて、取り組むテーマを増やしたり、課題を解決する時間を短縮することが可能になりました。紙媒体ではなく電子媒体での情報交換、情報付加が可能になり、他の前提が揃えば意思決定のスピードを上げることが可能になりました。社会現象としての「アラブの春」は典型例です。
求められる対応力の向上
世界は小さくなり、環境の変化は加速したことで、それに対応しなければならない場面が増えました。個人や組織が本来の目的を達成するために環境の変化に対応する負荷が高まっています。負荷とは環境の変化への対応を始めて、変化に追いつくまでに投入する資源のことです。
この負荷を軽減する手段は次の2つです。
GAPの感受性を高くする。→変化の少ないうちに対応を開始して対応を完了する。
外部のリソースを活用する。→委託の条件を整えて、開始して対応を完了する。(ただし、外部委託経費が必要)
もちろん、両方を組み合わせて負荷を軽減することは可能です。また、後者は委託条件を整えてフォローする作業が必要になります。
環境の変化への対応(以下、変更管理と称します)を開始して完了するまでには、次の決断が必要になります。
・変更管理が必要であること
・変更管理の計画作成(期間、対象”価値創出 or 価値受容”、手順、投入する資源、必要な知識・技術、必要な場合委託先)
・変更管理の開始
・変更管理の終了
そして変更管理の実行があります。当然、実行時のトラブル対応を含みます。
対応力とは決断と実行が複合的に組み合わさって出来上がったものです。
この中で最も重要なのは「変更管理の計画作成」の決断です。何故なら、変更管理に必要な負担は全て計画によって決められるからです。実行力を鑑みて期間、対象、手順、投入する資源、必要な知識・技術、(必要な場合)委託先を複合的に判断して、「変更管理の計画作成」を決断することになります。
「予測の精度はプレーの精度に影響を受けます。」
変更管理のプロセスは次の通りです。
順番に従って対応する場合、段階的にこのプロセスを実行します。
またトライアンドエラーを繰り返す場合、このプロセスを繰り返します。
情報収集→意思決定→価値創出→価値受容
一般的に環境への評価が一旦定まれば、その変化をwatchすることになります。変化の有無に焦点を宛てて情報収集しています。
意思決定では、変更管理の対象(価値創出、価値受容の何れか、若しくは両者)を決めます。
価値創出とはinput(情報), bias(情報付加), output(成果物)のプロセスを指します。
価値受容とは受容者がoutputの価値を感じるプロセスを指します。
理想像 環境の変化への対応
最小の負荷で変更管理を完了することが理想です。
具体的な要素は、次の通りです。
1.変更管理の影響を受ける個人が対応を前向きに捉えることが出来る。例えば、成長の機会とする。
2.変更管理のタイミング(開始から終了まで)を特定できる。
3.計画を正確に作成できる。
4.計画を迅速に作成できる。
5.正確に実行できる。
6.迅速に実行できる。
7.トラブルの対応に際して、1~6を満たす。
人財育成への取り組み
理想的な変更管理を実行できる人財の育成を提言します。
最小の負荷で変更管理を完了できる人財の要素を箇条書きにしますと、
1.変更管理を前向きに捉えることが出来る。
2.変更管理の担当者の実行力を正確に評価できる。
3.変更管理の期間を見積もる。
4.変更管理の対象”価値創出 or 価値受容”を決める。
5.変更管理の手順を決める。
6.変更管理に投入する資源を見積もる。
7.変更管理に必要な知識・技術を決める。
8.変更管理に必要な場合委託先を決める。
9.2~8を複合的に判断して最小の負荷で完了できるように計画を正確に作成する。
10.9の計画を迅速に作成する。
11.変更管理を正確に実行できる。
12.変更管理を迅速に実行できる。
13.トラブルの対応に際して、1~12を満たす。
2~13を一人で実行する場合は、全てを満たす個人が理想的な人財です。
複数で実行する場合、それぞれの役割を正確・迅速に全うできる個人、そして全体をマネジメントできる個人が理想的な人財です。
個人は各要素を如何にして育成できるか
各要素に育成方法を追記します。
1.変更管理を前向きに捉えることが出来る。
→知識・技術を獲得する等の成長の機会と捉えるようになる。
2.変更管理の担当者の実行力を正確に評価できる。
→実行の手順を見える化して作業効率を定量化、そして担当者の処理能力の評価を繰り返して行い評価力を高める。
3.変更管理の期間を見積もる。
→2、4~8を複合的に判断して期間を設定する作業を繰り返して行い見積もり力を高める。若しくは外的要因から特定する。例えば、納期。
4.変更管理の対象”価値創出 or 価値受容”を決める。
→変更管理の目的から対象を決める作業を繰り返して行い決断力を高める。
5.変更管理の手順を決める。
→2~4、6~8を複合的に判断して手順変更・作成の作業を繰り返して行い決断力を高める。
6.変更管理に投入する資源を見積もる。
→2~5、7、8を複合的に判断して資源を見積もる作業を繰り返して行い決断力を高める。
7.変更管理に必要な知識・技術を決める。
→2~6、8を複合的に判断して知識・技術を決定する作業を繰り返して行い決断力を高める。
8.変更管理に必要な場合委託先を決める。
→2~7を複合的に判断して委託先を決定する作業を繰り返して行い決断力を高める。
9.2~8を複合的に判断して最小の負荷で完了できるように計画を正確に作成する。
→最小の負荷で完了する計画を正確に作成する作業を繰り返して能力を高める。
10.9の計画を迅速に作成する。
→最小の負荷で完了する計画を迅速に作成する作業を繰り返して能力を高める。
11.変更管理を正確に実行できる。
→計画に従い、正確に実行する作業を繰り返して能力を高める。
12.変更管理を迅速に実行できる。
→計画に従い、迅速に実行する作業を繰り返して能力を高める。
13.トラブルの対応に際して、1~12を満たす。
→1~12の通り。
大きな括りでまとめると次の5つの観点から育成が必要となります。
1.仕事を成長の機会と捉えるマインドセットを涵養する。
2.作業手順を見える化する能力を高める。
3.作業効率を定量化する能力を高める。
4.関係する要素を複合的に判断して決断する能力を高める。
5.具体的な作業を実行する能力(正確・迅速)を高める。
複数の人と変更管理を行う場合、全体のマネジメントが必要になりますが、その育成方法は5番目の項目に含まれます。
人財育成 5つの観点
環境の変化に対応するためには、次の5つの観点から人財育成が必要となることを説明しました。
1.仕事を成長の機会と捉えるマインドセットを涵養する。
2.作業手順を見える化する能力を高める。
3.作業効率を定量化する能力を高める。
4.関係する要素を複合的に判断して決断する能力を高める。
5.具体的な作業を実行する能力(正確・迅速)を高める。
仕事を成長の機会と捉えるマインドセットは自己効力感と密接に関係します。困難な仕事に挑戦する意欲は高い自己効力感に基づきます。
(詳しくは「自己効力感の形成過程-選択の過程」をご参照下さい。)
このマインドセットを涵養する上で、作業効率の定量化は有効な手段です。自身が成長を実感し、チームのメンバーがその成長を承認することに繋がります。そして作業効率を定量化する前提は、作業手順の見える化になります。作業手順の見える化のためには、効率的な作業手順を構築できるまでに、具体的な作業を実行する能力を要します。効率的な作業手順を構築するためには、作業に必要な情報、手段、影響因子を複合的に判断して手順を決断する能力を要します。
5つの観点の一つ目を自己効力感を高めることに言い換えれば、他の4つの観点は全てそこに到達するための要素となります。
以上が、私のBackgroundから構築した人財育成のモデルであり、その理念は「すべては自己効力感のために」となります。
これは、私のコーチング理念と同一のものです。
先ほどの私の「人材育成 5つの観点」は「コーチング 5つの観点」のアナロジーになります。
コーチング 5つの観点とは
仕事の定義が課題克服であれば、「人財育成 5つの観点」は「コーチング 5つの観点」と全く同じになります。
クライアントを次の状態にする。
1.課題克服を成長の機会と捉えるマインドセットを涵養する。
2.作業手順を見える化する能力を高める。
3.作業効率を定量化する能力を高める。
4.関係する要素を複合的に判断して決断する能力を高める。
5.具体的な作業を実行する能力(正確・迅速)を高める。
エピローグ
人財育成とはコーチングである。これが私の結論でした。
「世界は小さくなり、環境の変化は加速している」現在では、自律型人財を中心として組織を運営せざるを得なくなるのではないでしょうか。「人財育成 5つの観点」は、自律型人財を育成する観点です。
ここでお示しした人財育成のモデル、それを導き出した理論は私のBackgroundから出てきたものです。もちろん、あなたの人財育成のモデルとは異なるかもしれません。しかし、そのGAPは、言葉の定義の違い、経験による違いにほぼ集約されると考えています。
あなたの人財育成の観点はどんな観点ですか?
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