自己効力感の形成過程 アルバート・バンデューラさん
2014/05/24
皆さんお早うございます。あなたの心の骨格スタイリスト、Mr. 理念 SHIMOMURA Takujiです。
「自己効力感の形成過程にもプロセスはありますが、あるタイミングで効力の信念が固まる瞬間は、同時に4つのプロセスを回しているようです。これは、ある意味ヒトの決断と同じプラットフォームだと思います。きっと、直感は変化の認知と決断の瞬間に時間差がない状態を指すのでしょう。この予測が正しいとすれば、状況をクリアにして行く経験の蓄積が直観力を磨くことになります。」
プロローグ
自己効力感は皆さんお持ちです。
私は自己効力感をお持ちではない方を存じ上げません。
自己効力感は理念の体現の鍵です。
それは、どうやって、形成されるのでしょうか。
今回も 激動社会の中の自己効力*1 を紐解いてみましょう。
自己効力感を形成する4つの過程とは
効力促進の過程は、「認知的過程」、「動機づけ過程」、「情緒的過程」、「選択の過程」の4つに分かれます。これら4つの過程が同時に作用し、その時の行動が決まります。
それでは、4つの過程をそれぞれ見てみましょう。
認知的過程とは
自身の自己効力感を認知する過程です。
認知的過程での効力の信念の影響は様々です。個人の目標設定は能力の自己評価に影響されます。自己効力感が強ければ、より高い目標を設定し、それを達成しようとします。
重い負担のある困難な状況を処理する任務に直面したとき、自己効力感の低いヒトは、考え方が揺らぎ、意気は低下し、作業の質も悪化します。一方、弾力のある自己効力感を持つヒトは、挑戦すべき目標を設定し、分析的によく考えながら課題を達成します。
動機づけの過程とは
自己効力感が自身の動機づけに影響する過程です。
動機の要因は3つあります。それは、「原因帰属」(帰属理論)、「結果の期待」(期待-価値理論)、「認知された目標」(目的理論)です。
帰属理論とは
自身が行動した結果の原因を考える際に自己効力感が影響を及ぼします。自身が非常に有能であると評価するヒトは、失敗したときに、努力が不十分であった、若しくは不利な状況であったため失敗したと考えます。一方、自己効力感が低いヒトは、自分の能力が低かったため失敗したと考えます。
期待-価値理論とは
自身が結果を期待して行動する意欲がわくことに自己効力感が関係します。ある行動はある結果を生み、その結果には価値が付加されます。自身が何か出来るという信念と、結果が起こりそうだという信念とによって行動します。この予測に自己効力感が影響します。
目的理論とは
挑戦するに値する目標が、動機を高め、強めていく。自己充足感の基準に合うように目標を作り出すことで、自身の行動の方向を定め、目標を達成するまで努力しつづける傾向を持つ。
自己効力感は目標または個人の基準に基づいた動機づけにおいて次の3つの影響が考えられます。
・行動への自己充足的あるいは自己不満的な反応。
・目標を達成するための自己効力感を得ること。
・進歩の過程に基づいて目標を再調整すること。
情緒的過程とは
自身の対処能力に関する自己効力感は、脅威や困難な状況において体験する、ストレスや抑うつの程度に影響します。自己効力感は不安が生じたときに中心的な役割を果たします。
不安や抑うつへの対応手段
次に不安や抑うつへの対応手段について述べます。対応手段は3つあります。
「高い自己効力感」、「悩みの種となる考えをコントロールする訓練」、「環境を安全なものに変える行動」です。
高い自己効力感
潜在的なストレスを手に負えないと思い込んでいる人々は、だんだん自分自身で機能を低めます。一方、潜在的な脅威をコントロールできると信じる人々は、脅威を常に警戒したり、心を乱すような考えを思い浮かべたりしません。新しい社会に適用する場面では、自己効力感の高いヒトはチャレンジとみなすが、低いヒトは脅威とみなします。*9
悩みの種となる考えをコントロールする訓練
「心配鳥が来てあなたの頭のまわりを飛び回るのを防ぐことはできないけれど、髪の毛のなかに巣を作るのを防ぐことはできる。」
ストレスの主な原因は、悩みの種の数ではなく、それを止めることができない無力感です。対処の自己効力感も思考のコントロール効力感もともに不安や回避行動に影響を及ぼします。恐怖症のヒトが技術の習得体験により、対処の自己効力感が最高レベルに上昇した後、同じ脅威をうまく処理しています。
環境を安全なものに変える行動
自己効力感は対処行動の効果を通じてストレスと不安をコントロールします。自己効力感が高まれば、ストレスを生み出す状況への耐性ができ、自身の望む方向に進むことが上手くなります。
“ネガティブな社会状況のなかで、成し遂げられる大きな変化は、たいていの場合、個人的によりもむしろ集団的な効力訓練を通して達成されるものである。”
自己効力感と抑うつ
自身をコントロールしようとするときに自己効力感が低いと、不安とともに抑うつも生み出します。
抑うつの原因とは
抑うつの原因は3つあります。それは、「願望が満たされない」、「社会的効力感が低い」、「考え方をコントロールできるという効力感が低い」です。
原因1.願望がみたされない
自身が達成できないと判断したところに自身の価値水準をおくと抑うつ感情に追い込まれる。
原因2.社会的効力感が低い
社会的効力感とは、生活に満足感をもたらしたり、慢性的なストレスのネガティブな影響を緩和するような対人関係を発展させる自己効力感のことです。
社会的援助はストレス、抑うつ、疾病に対するリスクのコントロールに役立ちます。この社会的支援は待っていれば自然に出てくるものではなく、自分から出かけていって、支援的な関係を構築するものです。この効力感が弱いと直接的に社会的援助が縮小し、抑うつの原因になります。
原因3.考え方をコントロールできるという効力感が低い
ヒトが抑うつになる多くの場合、落胆や失望などの思い込みが原因となっています。このような思い込みを消すことについての効力感が低いと、抑うつはいっそう強くなります。気分と自己効力感はお互いに影響を受けています。自己充足や自己尊重を獲得できるという自己効力感が低いと、抑うつは強くなり、しだいに自己効力感を消失させ、士気を低下させることになります。
選択の過程
自分に役立つ環境を作り出したり、日々生じる出来事をコントロールしていく過程です。
自己効力感により、ヒトは自身の望む活動や環境に影響を与えて、そのヒトの人生を形成します。この過程で、ヒトは可能性やライフスタイルを啓発するような環境を選択することで、そのヒトの運命が決められて行きます。この選択行動に影響を与える要素は、個人の発達の方向に大きな影響を与えます。これは環境を選択することで、ヒトが社会的な影響を受けるため、自己効力感を決定した原因を起点として効果が現れ、能力や価値や興味を促進し続けるからです。
自己効力感の強いヒトは人間として成就することや個人のwell-being(いい感じ)をいろいろな方法で強めていきます。困難な仕事は、習得すべき挑戦と受け止めて進んでいきます。これは、活動に対する興味と深く没頭する姿勢から育成されます。このような人々は、挑戦すべき目標を設定し、それにコミットメントし続けます。困難に直面すると努力し続けます。失敗は努力不足、知識技術不足であり、補い得ると考えます。困難な状況はコントロールできるという確信を持って臨みます。
自己効力の信念が一度形成されると、これは、人間の機能の質やレベルに重大な貢献をすることになります。
以上が抜粋です。
エピローグ
自己効力感を高めることに、不都合はないように思えますね。
あなたが自己効力感を高めることで不都合なことが発生するとしたら、それは何ですか?
*1 アルバート・バンデューラ監修, 激動社会の中の自己効力, 金子書房(1997)
Edited by Albert Bandura, SELF-EFFICACY IN CHANGING SOCIETIES, Cambridge University Press, 1995
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