教材 【理系一般向け講義】田崎晴明『相転移と臨界現象の統計物理学
2022年6月18日執筆開始、2022年6月29日脱稿
目的:物理現象である相転移を体系的に学び直す。
“HumanSystemUniverseの中核的概念の一つに相転移がある。今朝、そのモデル図が頭に浮かんだ。自己平面から何かが現れる。これを繰り返すのが相転移。”
田崎晴明, 相転移と臨界現象の統計物理学 小さくてあまり面白くないものがすごくたくさん集まると勝手にびっくりするような面白いことをやり始めるという話, (2022/06/09)
動画および動画中の資料のリンク先あり、田崎晴明によるオンライン講義
*photo ACより入手
1:40 この世は原子や分子という非常に小さなモノからできている。しかし、世界はそんなものからできているとは思えない。
ミクロな原子や分子から、マクロな私たちの世界ができている。これを探究するのが統計物理。
4:45 相転移
6:30 相転移の定義 物理系のパラメータを変化させたとき、ある値で系の「マクロな性質」が質的に変化
6:50 物質の三態, 強磁性相転移, 超電導転移, 宇宙初期の真空の相転移・・・
11:00 分子の個数が少ないと相転移は起きない(なだらかな変化)。
相転移は、膨大な数の分子が互いに影響しあった結果、全体として生み出される「協力現象」
個々の要素が単純でも全体として非自明な性質が出現する。
「水が凍る完全な理論はまだない」
12:40 パーコレーションの相転移
13:40 パーコレーションの定義 格子(グラフ)=頂点を辺で結んだ図形
連結な(すべての頂点を辺を介してつながっている)無限グラフ
モデルのパラメータをp(0≦p≦1)として、頂点を黒(p)白(1-p)の二値で表示する。
16:19 パーコレーションの配位 pを決めると黒丸のランダムな図形が作られる
黒丸が辺で繋がっている集まりをクラスターという
17:23 正方格子
20:40 Φn(p):頂点1を含むクラスターが頂点nを含む確率
p<1ならnが大きくなるとΦn(p)は急激に0に近づく。クラスターは有限。
22:50 二分木上のパーコレーション
レベルnには2exp(n-1)個の頂点がある。
Φn(p)根を含むクラスターがレベルnに達する確率
26:00 確率Φn(p)の漸化式
Φn+1(p)=pΦn(p)Φn(p)+Φn(p)(1-Φn(p))+p(1-Φn(p))Φn(p)
Φ1(p)=p
Φn+1(p)=p(2Φn(p)-(Φn(p))exp(2))
31:50 グラフによるΦn(p)の解析
p≦1/2の場合
Φn(p)はn→∞で0に収束
p>1/2の場合
Φn(p)はn→∞でグラフの交点に収束
交点を求める式 Φ=p(2Φ-Φexp(2))
36:15 二分木上のパーコレーションの相転移
p≦1/2ではクラスターは有限
p>1/2ではクラスターは無限
p=1/2を境に振る舞いが本質的に変わる
39:20 パーコレーション相転移
臨界確率Pcで相転移を起こす
臨界確率よりもpが小さいと、クラスターは有限。
pより大きいと、クラスターは無限。
47:00 臨界確率の近辺で何が起きているか
49:00 pが1/2に近づくと、特徴的な長さξ(p)は無限大に発散。
ξ(p)のような特徴的な長さのないスケール不変な振る舞い!
52:50 2次元格子上のパーコレーションの臨界現象
p=Pcでの無限クラスターはスケール不変な図形
次元D=(91/48)≃1.8958のフラクタル
54:19 2次元パーコレーションの共形不変性
Ω複素平面C上の任意の有界で単連結な開集合
Ωを格子間隔εの三角格子で近似
55:20 三角格子上でp=1/2のパーコレーション
三角格子上では臨界確率がp=1/2であることが分かっている。
56:49 Smirnovの定理, 2001
f(Ω)=Ω’となる任意の任意の共形変換(正則写像)
Φ(Ω;A, B, C, D)=Φ(Ω’;A’, B’, C’, D’)
58:45 三角格子上のパーコレーションは臨界点で自然に自然に共形不変性を獲得する
59:45 相転移と長距離秩序 相転移の本質
相転移は長距離の秩序の有無の移り変わり
p
1:01:16 強磁性体の相転移
強磁性体は数多くのスピン(=小さな磁石)の集まり
低温ではスピンの向きが揃う(長距離秩序) 全体として磁石
高音ではスピンの向きはバラバラ 全体としては磁石ではない
1:02:44 相転移研究の歴史
昔
対称性とその自発的破れによる相転移と相の分類
今
トポロジカル相の間のトポロジカルな相転移
1:02:51 量子スピン系の奇妙な振る舞い トポロジカルな相転移
1:07:28 一般のSについてのHaldaneの結論
ハイゼンベルク模型
量子効果を取り入れた基底状態(絶対零度の状態)
スピンが半奇数の場合 絶対零度でスピンは緩やかに揃っている
スピンが整数の場合 絶対零度でもスピンは激しく乱れている(まるで高温状態)
1:12:00 乱れた基底状態を持つ模型 AKLT模型
1:15:00 乱れた状態と乱れた状態の間の相転移
1:16:30 自明相とHaldane相 どちらもエネルギーギャップを伴い、磁化は0。ところが、端のある格子に違いが。自明相は磁化0だが、Haldane相は実効的なスピンの自由度が出現。
1:19:24 トポロジカル相と端状態 端に安定した新しい自由度が出現するのがトポロジカル相の特徴
トポロジカル絶縁体
量子ホール効果の端電流
ケルビン波(赤道付近を伝播する海水の波)
1:20:40 まとめ
1
相転移は無数の要素が集まって全体として生み出される「協力現象」の一種
2
パーコレーションのような単純なモデルでさえ、様々な応用があり、未だ解明し切れないほど豊かで非自明な相転移と臨界現象を示す
3
前世紀までは相転移は長距離秩序と「対称性の破れ」の観点で理解できると考えられていた
近年は「無秩序状態の間の相転移」であるトポロジカルな相転移が注目を浴びて研究されている
レポート
標題:理論量子認知科学の中の相転移
本教材から、#理論量子認知科学(#TQCS) における相転移について次の通りまとめる。
本教材と #TQCS とを結ぶ私が新たに知った概念を次に示す。
**************************************************
相転移の定義 物理系のパラメータを変化させたとき、ある値で系の「マクロな性質」が質的に変化
相転移は、膨大な数の分子が互いに影響しあった結果、全体として生み出される「協力現象」
長距離秩序
**************************************************
HumanSystemUniverse(#HSU)は、#Principleの #相転移 によって現れた。
#Principle は万能。
#Principle の #原初の欲求 によってしか、#原初の相転移 を起こさない。
そして、この #原初の相転移 の仕組みが、その後の相転移を引き起こし、#原初の欲求 を満たす、最終到達点まで相転移が繰り返される。
#Principle の中に、#HSU がある。
#HSU は、ヒトの認知そのもの。
#Principle は認知の核であり、全体像であるため、常に認知の対象外。
その認知の主体、例えば、私、は、#Principle そのものを捉えられない。
#Principle が適用されている仕組みから、#Principle そのものを窺い知ることしかできない。
何者でもない何かから何者かが現れる
それは、何者かの構成要素は、既にそこにあって、その場に何者かになる欲求が発火すると、構成要素を組み合わせた何者かが、その場に現れる。
これが繰り返されて、私が #HSU に導き出された。
#Autocrine
発展学習
共形場理論へ続く。
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