未知の課題に備えるリテラシーの時代
2020年3月3日
コロナウィルス感染の話題が絶えることはありません。
日本がこれまで体験したことのないリスクマネジメントを国全体で行っています。
国の政治のリーダーは首相です。もちろん、首相のリーダーシップには期待が高まるのは自然な流れだと思います。
正直、誰が首相であれば、すべてのヒトが納得できる対応ができるのか、私には良く分かりません。
日本の現状として、感染症が広がるのを防ぐ専門家(公衆衛生)が手薄との見解もあります。
「日本は公衆衛生の分野が手薄。感染症の方はウイルスか細菌の研究をして教授になった方で、感染症の公衆衛生の研究で教授になった人はまずいないと思う。専門家会議にはウイルスや細菌感染の専門家、内科の人ぐらいは行くが、公衆衛生の専門家が手薄」
大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之招へい教授
誰の知識を最優先にするのか、これはヒトが直面するすべての場面における問いですね。
今、そしてこれからの感染症対策が功を奏するように期待しています。
未知な体験を克服する。
自分一人で克服するならまだしも、人数が多ければ多いだけそのヒト達が納得済みで対応することは困難なのではないでしょうか。
ただ、自分の意思決定については、その理由を自分の言葉で語れる自分でありたいと思っています。
今回のテーマ「未知の課題に備えるリテラシー時代」は、ここまでのコロナウィルスの感染経過から、今後の感染対策を含め、未知な課題に直面した時、必要な行動を取るためにはどう意思決定すれば良いのか、そのためにどんな準備をしておけば良いのか、そのモデルをお示しします。最後に、この2つのモデルから想定される国の豊かさの指標について、今、考えていることをお伝えします。
ここにお示しするのは私が提案する一つのモデルです。もしかしたら、あなたがお考えのモノとは異なるかも知れません。
私とは違うモデルをお持ちの方とは、是非、情報交換をさせて頂きたいと思っています。
こちらまでご連絡を頂けますように、よろしくお願いします。
それでは、最初に未知の課題に直面してから解決するまでのモデル。
例えば、今回の疫病、そして、東日本大震災のような災害、その中で発生した原発事故。
社会資本、社会基盤を失った場合、それを復旧できることが豊かさの指標であり、その期間が短かくなれば、評価が高くなりそうです。
災害が発生してから何時間後に専門家チームが現地に入ったかも被災者の方に安心を齎すポイントであるように思います。
ネットでこんな資料を見つけました。
「復旧・復興ハンドブック」には発災後の対応として、大きく分けて2段階、そして、それぞれに段階があります。
目次からの引用です。
第一章 復興への条件整備
1.1 復興に関連する応急対応
1.2 計画的復興への条件整備
第二章分野別復興施策
2.1 すまいと暮らしの再建
2.2 安全な地域づくり
2.3 産業・経済復興
このハンドブックの目的にこうあります。「・・・主に発災後の利用を想定して復旧・復興に関する手順や参考情報を示した、ハンドブックであり、被災地方公共団体における迅速かつ円滑な復旧・復興への取り組みを支援することを目的として作成したものである。・・・」
このハンドブックが自然災害からの復旧・復興の確立した一つのモデルです。
では、今回のような感染症のリスクに対してモデルはあるのでしょうか。
「国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本計画(概要)」を見つけましたが、実際に脅威となる感染症が発生した時の対応については触れられていませんでした。
「復旧・復興ハンドブック」のように、発災後の対応を含む「国際的に脅威となる感染症対策ハンドブック」(仮称)の作成が必要だと思われます。
どちらも、国全体を巻き込む活動になります。既に、体制はできています。幾つかの専門部会(対象となる対策領域における中核的な課題一つ一つに取り組む部会)があり、メンバーは各省庁、専門家で構成をされています。
このフレームは国家に限らず、あらゆるレベルでの未知の課題への対応に使えそうです。
どんなレベルの「未知の課題」への対応も、それを実行する組織と、その「未知の課題」を扱う領域の専門家組織を組み合わせる体制です。
ただ、「未知の課題」を扱う領域を特定できない場合、発生した時点で「未知の課題」となります。従って、その時点から対応が開始されます。
どんな組織にも、その組織にとって「未知の課題」が発生したとき、それに対応する組織もしくは担当者が必要だと私は考えています。
以下に、扱う領域を特定できない「未知の課題」に対応する組織もしくは担当者の準備モデルをお示しします。
この課題に備えるために、日々、感度を高くしましょう。それまで気づかなかった違いに気付けるようになります。
また、色々なヒトと交流して、様々な専門家と繋がるネットワークを持ちましょう。今はSNSがその手段になってますね。
更に、自分の興味対象を広げることも有効です。それは、自分の事業領域の裾野を広げることにも繋がります。自分の事業の隣で起きていることを知れば、それが自分の事業で起きるリスクを評価できます。
仮説を創る能力を磨く。これは、起きている現象の原因を推測したり、これから起きる未来を予測する能力です。起きてしまったことはそのBackgroundを想像し、起きていないことを起こすにはどんな手を打てば良いかを想像しましょう。自分が直接関わっている事象だけでなく、自分が直接関わっていない事象についてもです。社会への当事者意識が高まり、自分が関わっていない事象がどんどんと減ってくると、「未知の課題への対応能力」がどんどんと高まります。仕事でも範囲を拡大していくと、「未知の課題への対応能力」は拡大とともに成長します。
ここで、参考になりそうなアナロジーを2つ紹介します。
ひとつは災害対策ではなく幼児教育、もうひとつは今回のコロナ感染の他国での対策事例です。
ひとつめ「フィンランドの幼児教育」です。
「フィンランドの幼児教育は、ECEC (Early Childhood Education and Care――幼児の教育と保育)プログラムが核となり、現場では幼児教育の専門家(高等教育を修了)を含む3名のチームになって活動する。ECECには道具としてのICTを扱うことも含まれている。専門家としての知識を定期的にブラッシュアップすることが求められている。
このチームが、一人一人の幼児のプランを両親と共に作成し、それを6ヶ月毎に見直す。このプランには、have to はありません。その日にやりきらなければならないモノは何一つない。
その子にとって大事なモノが何なのか、それを学ぶことを優先する。カリキュラムはそのための一つの手段であるとの扱い。その場その場のアドリブで手を打てるのが幼児教育の専門家。それができないと先生の資格はない。」
私が着目したのは、ECECを徹底的に理解した幼児教育の専門家が、現場でカリキュラムをすべてこなすことではなく、その時起きた事象からその場で最適な手を打つことを能力として求められている、という点です。専門家はその知識が必要な時に適用することに役割があります。ここで頭に浮かんだのは専門家としての想像力です。災害対策の専門家であれば、あらゆる災害を想定して、それが今起きた時、どんな対応ができるのか、いわゆる思考実験の能力と言い換えることができそうです。幼児教育の場合、目の前の子供がすべてです。その子への理解と働きかけが瞬時に行われ、対応しやすいですが、災害対策は全体像の把握が難しいという難点があります。この難点を克服するための想像力です。
次に参考になりそうなのは、今回のコロナウィルス感染における台湾の対応です。
国内に感染患者がいない1月15日から「法定感染」に指定しました。渡航制限、休校対策も実施して、感染拡大防止に努めました。マスクの供給不足のリスクには購入を実名にして7日間に2枚に制限、更に、各店のマスクの在庫状況を可視化しました。そうすると民間のエンジニアが地図とリンクさせた無料のアプリを配布して国民がマスクを確保しやすい状況を作りました。
感染は物理的な現象で、ヒトとヒトの接触によって拡大します。情報共有はIoTのおかげで随分と楽になりました。
被害を拡大しないための対策、国民一人一人が自身の健康を守ため意思決定できるように情報を共有する。
日常的な情報共有の活動が災害時の情報共有に役立つ社会にして行きたいですね。
日常的な努力やアナロジーを活用して「未知の課題への対応能力」を磨いている時、それが発生しました。
あなたは、どう対応しますか?
これは「復興・復旧ハンドブック」が一つのモデルになります。
未知の課題が障害の場合、まずその障害の拡大を止めて、そこからの克服への行動を開始します。それは計画を立てることから始まり、現象の深いところから順番に表面に向かって行動を開始します。
表面から見ていると、どのレベルに真因があるのか判断がつかない場合があります。何度も何故を繰り返して行くと、真因に気付けるかも知れません。
表面でおきていることは違うけれども、真因は同じところにあると気付くことも「未知の課題への対応能力」のひとつです。
この1年間の間にお会いした方に「すごい!」を思える方が2名いらっしゃいます。
一人目は、システムの技術者。報告書を読むとおかしな箇所にすぐ気づく、プログラムのダンプリストを見ているとおかしな箇所にすぐ気づく。この方は「美しくない」の感覚を頼りにおかしなところを見つけていらっしゃいました。
二人目は、昔、プリント基板を製作していました。そのプリントに触れるとどの部品が故障しているのかが分かる。故障の測定機器いらず。
このお二人は私とは違う「未知の課題への対応能力」を持たれていて、それを磨き続けて来られたのだろうと考えています。
私の場合、直観で課題を捉え、そこを探求して行くとやっぱりここだという真因の見つけ方です。これは、サッカーでポジショニング能力を探求した体験が功を奏したようです。おかげさまで、自分の動き方とボールを蹴るタイミングを瞬間的に判断して、瞬間的にプレイできるようになりました。この感覚は仕事でも再現されていて、製薬会社でも今でもこの感覚で「未知の課題」に対応しています。「未知の課題」に直面すると、直ぐにそのBackgroundが頭に浮かびます。
私の体験はすべてのヒトに当てはまりそうです。夢中になって取り組んだ体験が、「未知の課題への対応能力」を実体化した、です。
ここまでが「未知の課題」への対応および準備モデルです。
最後に、ここまでの調査と考察から「国の豊かさを示す指標」へと考察を更に進めます。
ここで直近の記事「GDP至上主義への疑問」でお示ししたモデルをご紹介します。
「今後、AI、ロボット、IoTが理想的に活用されて、社会資本が更に充実してくれば、国民の労働がなくても国家を運営できるようになって行きます。こう考えたとき、「経済活動の盛んさ」は、国民(リーダー)が立ち上げたプロジェクトの数が良さそうです。国に活力を産み出すアイデアを出すヒト、その実現に協力するヒト、そのプロジェクトに資本を提供するヒト。資本が充実した社会での国民はこの3つの領域のどこかに所属しそうです。国民一人一人がリテラシーを高められる社会資本が充実してくると、どの役割も熟せる国民になって行くでしょう。」
私はこの記事を書いた時点で、「経済活動の盛んさ」を国民(リーダー)が立ち上げたプロジェクトの数、と提案しました。
これは、誰か特定のヒトがリーダーという訳ではなく、限られたヒトしかプロジェクトを持てないという訳ではなく、社会課題に気づいたヒトが、そのヒトの視点、そのヒトのリーダーシップでプロジェクトを立ち上げられる社会をBackgroundにしています。
フィンランドの幼児教育から学んだ、「自分の感情をコントロールし、他者との関わり方を学ぶ」というのは、幼児期以降、人生を通して豊かな日々を送るための一つの指針であるように私には受け取れます。そして、この学び方、主観の形成が一人一人にリーダーシップを齎します。
一人一人が主観をいかにして形成するか。
その主観はどこまでの範囲を俯瞰し、どの程度の関係性までを洞察し、自分のリーダーシップにどれだけの臨場感を持つことができるのか。
この主観が自身の感情をコントロールできるレベル、他者との関わり方のレベルを決めているように思えます。
この主観の側面を捉えているのが、リテラシーです。
リテラシーが高いとは、俯瞰力、洞察力、臨場感が高いことである、と私は考えます。
では、リテラシーと未知の課題への対応能力はどう繋がっているのでしょうか?
今回の事例はコロナウィルス感染等の疫病、自然災害等、国を上げての対策が必要な課題への対応でした。ただ、この課題は毎日のように起こるのではなく、突然、起こります。先にお示ししましたが、被害の拡大を防ぎ、1日も早く復興・復旧することが豊かさの指標になると考えます。この社会的な能力を高めるには、実行する組織とその課題を扱う専門家組織を組み合わせた体制による情報共有と合意、そして、シミュレーションによる実践力の向上が有効だと考えます。ここで言う「実践力」がリテラシーのことです。
では、日常的な未知の課題への対応能力とリテラシーとの関係はどうなっているのでしょうか?
あなた自身の日常的な未知の課題への対応能力を考えたとき、その中心にあるのはあなたの主観です。主観そのものがリテラシーであり、その能力は俯瞰力、洞察力、臨場感に相関することは、先にお示しした通りです。
日常的な未知の課題への対応能力とリテラシーは、間にあなたの主観が入ると繋がります。
ヒトは自然の一部であり、主観の形成も自然の法則から逃れられません。更に、ヒトが形成する社会も然りです。まず、自然の法則を理解して、そのフラクタルとして自身の主観を形成し、そのフラクタルとしての社会の法則を実践することが、日常的な未知の課題への対応能力の向上には有効です。
こう考えると、国民一人一人のリテラシーの高さが、国の豊かさの指標と言っても良さそうです。
国民一人一人のリテラシーが社会的な能力における「実践力」のBackgroundになります。
そうなれば、国民一人一人が自分のプロジェクトを実行できる国になって行けそうです。
すべての国民が社会課題を解決するプロジェクトを持てば、相当、世界にインパクトを出せそうです。
もし、この指標が好ましいのであれば俯瞰力、洞察力、臨場感が最も高い国民が自然と首相になる社会体制を取ることを提案します。国民一人一人が自然の法則に従い主観を形成し、自然の法則に従った社会の法則を実践している、相当、豊かな国になって行けそうです。
リテラシーの逆転した上下関係は、非常に辛いモノです。それは、当人同士だけでなく、周囲にも分かってしまいます。
また、場面場面によってリテラシーが上下逆転します。その時、その場面で、最もリテラシーの高いヒトがリーダーシップを発揮できる組織へと社会へと相転移を果たしたいですね。上下関係を示す役職ではなく、役割を示す役職に変えてしまうのも一法かと思います。
私が通った小学校・中学校の一貫教育の現場では、「先生もみんなから学んでいる」と言われた先生が何人もいらっしゃいました。
私自身、U-12のFootballer(サッカー選手)のコーチをしていて、選手から学ぶ体験をかなりしています。視点は一人一人違うし、コーチが選手にとって良いと考えていることが、実はそうではない、こんな気付きを良くしています。多分、これは、相手が誰だとしても起きている現象だと私は考えます。
最も進んだティール(自律分散型組織)では、社長の役職も無くしてしまいかねない勢いです。
すべての国民が個人事業主になれば、結果的にプロジェクト単位で社会活動が行われることになり、プロジェクト毎にリーダーが立つことになりそうです。すべての国民が個人事業主になるのは、本人の人生におけるリスクマネジメントにもなりそうです。これを政策目標にすれば、学校教育の目的は、生徒を個人事業主として生きる力を育むことになります。そこでは詰め込み型の教育ではなく、自らが社会との接点(職業)を定義し、それを必要に応じて変えながら継続できる主観を形成する教育、すなわち個性を伸ばす教育へと相転移します。他のヒトと同じ事業で個人事業主になってしまうと競合しますね。一人に一つの事業が望ましいと考えます。ますます、幼児教育が重要になりますし、地域でのリタイヤ世代の協力も必要になりそうです。勿論、個人事業主の能力を持ちながら、会社に就職するのもありです。個人の人生の選択肢を増やす観点からの提案です。
これを政策として実行することは、勿論ありですし、それを既存政党には期待をしたいと思います。
できれば、超党派で取り組んで頂きたいです。
すべての国民がリテラシーを高められる国にするには、情報公開と他者への支配欲からの解放が有効だと考えます。
情報公開は、国民一人一人の主観から社会課題を設定し、解決に向けて行動することを可能にします。
他者への支配欲求は、私のこれまでの自分観察、他人観察の結果、そのヒトの不幸の原因となってます。そして、その影響を受けたヒトは、自分の行動に制限が加わります。主体的になれなくなってしまうのです。これは自然の法則をフラクタルとする主観の形成を妨げます。
今回の考察結果「国の豊かさの指標」は、私の主観では、非常に納得感の高い内容になりました。
この考察結果は、個人を中心とした豊かさです。個人を中心とした豊かさと社会の持続、地球の持続を結び付ける考察を、今後、して行きたいと思います。
まとめます。
未知の課題に対応するには、日常的なリテラシーの向上が有効です。
自分が夢中になっていること、自分の事業を中心に、興味対象を広げて行く、人的なネットワークを拡大する、仮説設定能力を上げる。
これを実行するための意思決定は、日常を未知の課題に対応するためのリテラシー向上の場にすると決める、未知の課題に直面したら逃げずにそれに取り組むと決める。これは、つまり社会の当事者になることの意思決定です。
あなたの主観は、今、どうなっていますか?
あなたの直観は、国の豊かさの指標は何が良いと言ってますか?
#Principle
#2025年までに量子人工知能を実現する委員会
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