コロナウィルス治験薬:Remdesivirの臨床試験(New England Journal of Medicineより)
2020/05/09
#拡散希望
2020年4月11日執筆開始
5月9日追記
・日本で特例承認されたこと。重症感染患者の治療に使用できるようになりました。
New England Journal of Medicineのオンライン版に2020年4月10日に公開された臨床試験の論文(Compassionate Use of Remdesivir for Patients with Severe Covid-19)の概要です。詳細は原文をご確認ください。
中身をお伝えするのが目的ではなく、この情報を早く広く社会に提供し、特に重症のコロナウィルス感染患者さんを治療されている医療機関に情報提供することを目的としています。
なお、本薬は臨床試験中で、安全性、有効性は明らかになっていません。そして、まだ、どこの国も承認していません。
この概要は情報提供を目的としています。情報をご活用される場合、ご自身の責任でご活用をお願いします。
→5月7日 日本の厚生労働省が世界で初めて本薬が重症患者の「SARS-CoV-2 による感染症」の治療薬として特例承認されました。厚生労働省の皆様、どうもありがとうございました。
<remdesivir>
ギリアド・サイエンシズ株式会社が開発したRNAポリメラーゼ阻害剤です。開発コードはGS-5734。4月7日にギリアド・サイエンシズ CEO ダニエル・オデイによる公開状が発表され、臨床試験中のremdesivirをコロナ感染患者さんに、幅広くお使い頂けるように新しいプログラムを提供したことが公表されています。「4月3日に欧州医薬品庁(EMA)は EU 加盟諸国に対し、本プログラムの導入を推奨したと発表しました。」日本での本プログラムの適用については不明です。
2016年、Nature に、Therapeutic efficacy of the small molecule GS-5734 against Ebola virus in rhesus monkeysの記事があり、GS-5734はエボラウィルスにサルで有効であり、臨床試験中とあります。
<臨床試験>
2020年1月25日から2020年3月7日に実施。
酸素飽和度94%以下の入院患者を対象に10日間、静脈内に30分から60分かけて投与。
1日目は200mg、2日目から10日目は100mg。
臨床試験の参加者は61名。
少なくとも1回投与された61人の患者のうち、8人が脱落(治療後のデータなしが7人、不正確な投与が1人)。データが分析された53人の患者のうち、22人は米国、22人はヨーロッパまたはカナダ、9人は日本。投与開始前、30人の患者(57%)が人工呼吸を受けていて、4人(8%)が体外膜酸素化(ECMO)を受けていました。追跡期間中(中央値18日間)に、36人の患者(68%)が酸素吸入状態が改善。この中には人工呼吸器を抜管した30人中17人(57%)の患者が含まれています。合計25人の患者(47%)が退院し、7人の患者(13%)が死亡。死亡率は、侵襲的換気を受けた患者で18%(34人中6人)、侵襲的換気を受けていない患者で5%(19人中1人)でした。
有効性の評価は、現在進行中の無作為化プラセボ対照の臨床試験の結果待ちです。
ここまでが、論文の概要です。
コロナウィルス感染症の臨床試験に関するガイドラインがFDAより公表されています。
FDA Guidance on Conduct of Clinical Trials of Medical Products during COVID-19 Pandemic
そこには、臨床試験のデザインの規定はなく、その結果が有効であっても無効であっても後から、その内容を検証できるように準備をして記録を残すためのガイドラインです。
臨床試験のデザインは本論文にあるように、治験薬のプロファイルから最も安全にそして有効に患者さんにお使いになって頂ける方法を臨床試験の実施者が作成します。
ギリアド・サイエンシズ株式会社に続き、他の製薬会社からもコロナウィルス感染症に有効な治療薬、ワクチンが1日でも早く開発され、臨床試験中でも、重症な患者さんへの治療に役立てられますことを期待しております。
なお、厚生労働省では、「医療機関向け情報(治療ガイドライン、臨床研究など」を4月2日に開設をしてます。
こちらで、治療薬の開発について公開されるようです。
また、厚生労働省へ「国民の皆様の声」募集 送信フォームにて下記の通り、要望しましたことを付記します。(2020/04/11 15:48)
<件名>
ギリア・サイエンシズ株式会社の治験薬Remdesivirの臨床試験と治験薬の提供
<内容>
この度はコロナウィルス感染の対応には大変に感謝をしております。
また、物理的な作業量の多い中、献身的にご活動をしていただきまして重ねてお礼を申し上げます。
4月2日には
医療機関向け情報(治療ガイドライン、臨床研究など)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00111.html
を開設して頂きまして、日本でもコロナ感染の治療薬の開発が進んでいることを知ることができて、
大変に嬉しく思います。成果に繋がりますことを期待しております。
もしかしたら、今、受け入れ体制をお造りになられている最中なのかも知れませんが、標記治験薬の臨床試験の結果が4月10日 New England Journal of Medicine のオンライン版で公表されましたことと、
ギリア・サイエンシズ社がRemdesivirを医療現場にご提供する準備のあることを公表されたことをご参考までにご連絡させて頂きます。
この2つをブログ記事にしていますので、そのurlを次に添付します。
コロナウィルス治験薬:Remdesivirの臨床試験(New England Journal of Medicineより)
是非、日本のコロナ重症患者さんの治療にRemdesivirを使用できる体制にして頂き、それを広く医療機関及び国民に周知して頂けますようによろしくお願いします。
医療機関向け情報(治療ガイドライン、臨床研究など)に公開されることになるのでしょうか?
引き続き、貴省の活動には期待をしております。
くれぐれも、職員の皆様には、お体にお気をつけてください。
ー厚生労働省への要望ここまでー
なお、東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、兵庫、福岡、愛知の保健当局には、本件を厚生労働省に情報提供をして、日本のコロナ重症患者さんの治療にRemdesivirを使用できる体制にして頂けるよう、要望したことをお伝えしました。(2020/4/11 16:44)
<件名>
ギリア・サイエンシズ株式会社の治験薬Remdesivirのコロナウィルスの臨床試験と治験薬の提供
<内容>
ご参考までに情報提供です。
もしかしたら、既にご存知かも知れませんが、標記治験薬の重症患者さんを対象にした臨床試験の結果が4月10日 New England Journal of Medicine のオンライン版で公表されましたことと、
ギリア・サイエンシズ社がRemdesivirを医療現場にご提供する準備のあることを公表されたことをご参考までにご連絡させて頂きます。
準備が整えば、治験薬Remdesivirが患者さんの治療に使えるかも知れない情報です。
この2つをブログ記事にしていますので、そのurlを次に添付します。
コロナウィルス治験薬:Remdesivirの臨床試験(New England Journal of Medicineより)
本情報は厚生労働省にも情報提供いたしました。
日本のコロナ重症患者さんの治療にRemdesivirを使用できる体制にして頂き、それを広く医療機関及び国民に周知して頂けるように要望をしたところでございます。
くれぐれも、職員の皆様には、お体にお気をつけてください。
2020年5月2日追記
4月29日、New England Journal of MedicineにRemdesivir Trials Suggest Potential Benefit in COVID-19; FDA Expected to Authorize the Drugが発表されました。
<DeepL翻訳>
新規コロナウイルス疾患(COVID-19)に対するレムデシビルの複数の試験結果が水曜日に発表された。
国立衛生研究所は、補助的な酸素や機械換気を必要とするものを含む肺病変を伴うCOVID-19で入院した約1100人の患者を対象に、レムデシビルを静脈内投与した無作為化プラセボ対照試験の予備的な知見を報告した。中間解析の結果、回復までの期間の中央値(酸素や入院を必要としなくなるまでの期間)は、レムデシビルの方がプラセボよりも31%早く(11日 vs. 15日)、死亡率は8.0%であった。死亡率はレムデシビルで8.0%、プラセボで11.6%でした(p=0.059)。ニューヨーク・タイムズ紙は、FDAが緊急使用を承認する予定であると報じている。
また、Lancet誌はレムデシビルの無作為化試験の結果を発表した。中国の重度のCOVID-19の症状発症から12日以内の成人240人近くが、レムデシビルの静脈内投与または10日間のプラセボ投与を受けるように無作為に割り付けられた。本試験は約450名の患者を登録することを目標としていましたが、武漢での流行が収束したため、募集は早期に中止されました)。主要評価項目である無作為化後28日以内の臨床的改善までの期間は、レムデシビル群とプラセボ群で有意差はありませんでした(中央値:それぞれ21日、23日)。しかし、研究者らは「臨床的に意味のある差を除外することはできず、いくつかの臨床パラメーターの数値的な低下が見られた」と述べています – 例えば、症状発症から10日以内の患者では、レムデシビルの方がプラセボよりも臨床改善までの期間が数値的に短かった(18日 vs. 23日)。
そして最後に、レムデシビルのメーカーは、重度のCOVID-19に対して、5日間と10日間のコースでも同様の効果があったと報告しています。この結果はまだ査読付きジャーナルには発表されていません。
<DeepL翻訳、ここまで>
なお、日本でも本治験薬を originator のギリアド・サイエンシズ社から承認申請があった場合、審査期間1週間程度の特例承認の対象とすることが加藤勝信厚生労働大臣から発表がありました。引用した記事の範囲では、他の承認されている抗ウィルス薬のレベルでデータが揃ってはいないようですが、効果が期待できそうな対象患者がある程度掴めているようです。既にお亡くなりになられている患者さんがいらっしゃって治療薬そのものがない現状、ギリアド・サイエンシズ社より医師の要望があれば治験薬を提供する意思が表明されていることより、準備された特例承認だと推察しております。
臨床現場で治療の実例を蓄積して頂いて、これからの治療に役立てて頂けるように日本の医師の皆様には期待しかありません。
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