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学習の記録 未来社会と「意味」の境界(2023)

      2024/10/08


学習の記録 未来社会と「意味」の境界(2023)2024年9月25日記録開始

谷口忠大, 河島茂生, 井上明人編, 未来社会と「意味」の境界 記号創発システム論/ネオ・サイバネティクス/プラグマティズム, 2023(勁草書房)

はじめに=Background

谷口忠大さんの「記号創発ロボティクス」を学習した直後、東京で知り合った中川裕志さんのFacebookで本著を知った。
構成論的手法により記号設置問題を解決するという谷口さんのお考えは、たった一つの行動原理、principle、を「私と同じように考えられる量子人工知能」により証明するとする私の考え方と親和性が高い。
本著により、工学的にprincipleを証明するための技術リサーチを行う。

成果=Output

本著の記述は「    」、私のコメントは”. “、何も付さない記録は本文の要約。

第1部 AI・ロボットと人間にとっての「意味」

“タイトルが「人間」がAI・ロボットより先ではなく後に来ている。優先順位がヒトならば「人間」を先に表記するだろう。”

第1章 AI・ロボットとの次なる共存に向けて:「意味」を語る意味 河島茂生

本著は「意味」をテーマにしている。AI・ロボットにとっての意味とヒト、生物にとっての意味について論ずる。

“(意味)は(回帰, 完結, 自己評価)を性状とする(主体)が2つの対象を記号接地した時の関係性である。本著では(意味)を定義するのか?その定義はどんなOutcomeに繋がるのか?”

AI・ロボットが実作業に組み込まれている。今、マネジメントとガバナンスが課題となっている。

“マネジメント、ガバナンスはヒトの領域。道具の領域ではない。道具をどう扱うかが、マネジメントとガバナンスの主題となる。職業倫理を退化させる手段に道具を利用するヒトや流れには留意が必要。人類史を振り返るとお金持ちがお金でお金を増やすために、お金の力で御用学者に権威付をして圧倒的多数のヒトを騙す手法を実行する。最近では、#COVID19事件 にこの手法が認められる。お金がいくらあっても不安、自分たちが贅沢をするために大量のヒトがお亡くなりになっても構わないと考える家系の影響を世界が受けている。自分を例外にするヒトの中にこの家系が含まれる。CO2削減を訴えながらプライベートジェットで移動する家系、これを実行している個人に投資している家系、これを実行している個人のネットワークの中に該当する家系がいると私の直観が言っている。#AI倫理は人類の倫理 世界に稀有なお金持ちが持っているみんなのお金を何に使う積もりなのか共有することが持続可能な人類につながる。”

AI・ロボットとの共存を考える上で創造的知性を社会的知性を取り上げたい。

“河井さんが、ご自身とAIとの関わりの到達点を設定できなければこの問いには回答できないだろう。”

本著では厳密な統一的な「意味」の見解を示さない。AI・ロボットとの共存を考えて行く上で今後必要となる議論に焦点を当てている。

「未来社会において考えるべき意味の意味とは何か」
「これからのAI・ロボットがさらに社会に入っていく上で、問われるべき意味の意味とは何か」

“繰り返しになるが(意味)は(回帰, 完結, 自己評価)を性状とする(主体)が2つの対象を記号接地した時の関係性である。(主体)は原点から到達点に向かい、自己認知欲求を満たすために意識を処理している。「(自己)はどんな原理で動いているのか?=(自己)はどんな原理なのか?」”

第2章 記号創発:身体と社会に基づく意味の創発 谷口忠大

未来社会を形成するパートナーとしてAI・ロボットと「分かり合える」のだろうか。

“自然社会に生きるヒトと工業社会に生きるヒトはお互いに慣性の法則が異なる。だからお互いに違和感を感じた時、それを解消する余白が必要となる。このような行動に出て、実際にお互いの違和感を解消できるのは(自己, 認知)を共有できているから。もし、AI・ロボットにヒトと同じ「主体=(自己, 認知, 身体)」の枠組みを設定できれば「分かり合える」のかも知れない。それは、谷口さんの定義による。”

記号創発ロボティクス」と記述の内容が重なっている。

記号創発システム論はネオサイバネティクスに影響を受けている。
サイバネティクスの「客観的な、観察された世界の分析」からネオサイバネティクスの「主体的な、観察する世界の分析」へ学問的転換をもたらした。

オートポイエシス論のシステム論
第1世代 ホメオスタシスを保つ動的平衡概念
第2世代 自己組織化概念
第3世代 システムが自らを生み出す自己制作 オートポイエシス概念(ネオサイバネティクスが影響を受けている)

階層的自律コミュニケーションシステム(HACS) 個人と社会との階層性

哲学的なHACSと人工知能やロボティクスを対象とした記号創発

“第1章、第2章ともヒトが欲求を満たす活動をしていることには触れていない。”

第3章 ネオ・サイバネティクスからの接近:生命システムによる意味創出と情報伝達というフィクション 西田洋平

サイバネティクスは広く一般に浸透している。
1970年代、サイバネティクスの延長だが、全く異なるネオ・サイバネティクスが生まれた。
オートポイエーシス論はネオ・サイバネティクスの核をなす理論。生命は自己産生(オートポイエシス)し続けるが、機械は他者産出的(アロポイエティック)。
オートポイエティックなシステムはその構成素が相互作用によってメットワークを作り出す。このプロセスのネットワークによって、その構成素が産出される。部分と全体の間の相互産出的な関係性が「オートポイエシス」。自らを産出し、自らの存在を特定している自律システム。
組織において閉じているが構造において開いている。

P.31 図3.1 最小の生命組織のオートポイエティックな閉鎖性の概略

生物細胞のイメージ
システムの構造は、それを具体的に実現させる構成素とそれらの実際の諸関係。
細胞と細胞外部との相互作用は存在し、その意味でシステムは開いている。
構造的にオートポイエティックシステムは常にその環境とカップリングしている。
カップリングで重要な役割を担うのはシステムの構造そのもの。
システムの構造が変化しても、オートポイエティックシステムである限り、オートポイエシスと呼ばれる組織化の仕方は変化しない。システムはオートポイエシスを維持しつつ、その時の構造に見合った様式で環境と相互作用する。
オートポイエシス論では、オートポイエティックシステム自身の構造によって特定される、環境との相互作用の領域を「認知領域」と呼ぶ。
認知とは、オートポイエティックシステムと環境との構造的カップリング現象そのもの。生命システムが具体的なシステムとして実現していること自体に付随する現象である。生命システム=認知システム。認知は生命と表裏一体。

「意味」はオートポイエティックシステムと環境との構造的カップリングを通じて生み出される。これを意味創出という。

P.33 図3.2 生命の自律性を説明する絡み合った二つのキーコンセプト

システムの同一性とその相互作用領域の特定として、自己と世界を創発させ、そこに特有の意味が生まれる。
生命現象と認知現象が表裏一体であるように、環境とカップリングした現実の生命プロセスと意味創出とは、一体不可分の関係にある。
一つ一つのシステムにおける「意味」が固有なのは、環境との相互作用がそれぞれのオートポイエティックシステムに依存するからである。
環境とオートポイエティックシステムとの構造的カップリングは認知的であり行為的である。
例えば、環境中のある対象を「認識」することで、そのシステムの構造が変化し、特定の方向へ向かう「運動」が生じたとする。接近では良い意味、遠ざかるのであれば悪い意味である可能性が高い。
最初に栄養素ありきではなく、行為とともに栄養素の意味が創出する。オートポイエティックシステムの自律性に基づく構造的可塑性から、システムが今どのような構造にあるのかということも一種の行為と見做せる。認知と行為はそのシステムの生き方であり切り離せない。「知ること」「行うこと」「生きること」は同じものの3つの側面。
#フランシスコヴァレラ さんは、#エナクティブアプローチを提唱。世界の存在体が演じる身体的な行為の歴史から心と世界が算出される。自律システムと環境との構造的カップリングによって、自己と世界が共創発するということである。自身の議論を自身に適用する態度がネオサイバネティクスの特徴。#自己再帰的 自律システムを理解することで認知という現象を理解し、システム自身に固有の意味の世界の出現を見る。自分自身が固有の世界にありながらこの議論を行っている。この時、我々は一人の観察者として自分を説明するループの中に自分自身が既に置かれていることに気づく。観察者を観察するネオサイバネティクス。
ネオサイバネティクスな生命感に基づく情報概念を根本からとらえ直す学問が基礎情報学。情報は生命にとっての意味と不可分。
意味は個々の生命システムは固有なので、個々のシステムを超えた情報伝達は原理的にあり得ないが、情報は確かに伝わっているように見える。この情報概にまつわる課題がネオサイバネティクスの情報学がとくべき最初の課題。観察者の視点を明確にし、複数のシステム間に存在しうる非対称な関係性を認めるアプローチを「階層的自律コミュニケーションシステム」(HierarchicalAutonomousCommunicationSystem: HACS)と呼ばれる概念に集約されている。オートポイエシスには階層的な関係があるとする考え方と、相互浸透と呼ばれる対等な関係あるとする考え方がある。

P.36 図3.3 HACSとしてみた二つの心的システムと社会システム

この図は西田さんの作図。二人の個人が大差をしている模式図。心的システムが個人、社会システムが対話。個人はそれぞれの意味を持っていて別のシステムとは情報伝達できないはずなのに対話が成立していることを説明する図。西田さんの主張は、社会システムの視点から個々の自律した心的システムを観察すると他者の発言を入力として、自分の発言を出力するアロポイエティックなシステム(他律システム)。個々の心的システムは社会システムの作動の寄与するように拘束・制約されたシステムである。心的システムは、自律システム、他律システムの両方として観察できる。情報伝達はフィクション。
“心的システムから社会システムを眺めても拘束・制約関係は観察できないとあるが、忖度は心的システムから社会システムへの拘束・制約関係であると考える。西田さんの社会システムの定義次第だが。理論量子認知科学における認知モデルをこの図に従って説明をする。身体=(個物, 共同体)、(共同体身体)は(個物身体)が異なる(自己)の共同体。(自己)を纏った(個物身体)が心的システムで、(共同体身体)が社会システム。すべての個体が共有する社会システム(共同体身体)はない。主観的な社会システムはあるが、客観的な社会システムはない。拘束・制約は(知っていること, できること)のことである。二人で対話が成立するのは記号(言葉)を共有しているから。記号は社会システムに含まれる。理論量子認知科学では記号でなく結節点を使う。自律システム毎に意味は異なり、情報伝達はフィクションとする西田さんの主張は、記号という共通言語を持たないというニュアンスがある。結節点は(回帰, 完結)した自律システムの中で機能する。その外では「上手く」機能しない。結節点は自律システムの中でデータマネジメントの対象になっている。基本的には増えるが、初動の質を確保するために、常に正規化している。その中心にprinciple(たった一つの行動原理)があると仮定して、その探求を1973年から続けている。”

HACSと記号創発システムは親和性が高い。どちらも「閉じた認知」。両者はピアジェを介した理論的類縁関係にある。ピアジェの同化と調節のプロセスの流れを汲んだグレーザーズフェルド「ラディカル構成主義」がある。
「認知主体は環境の一部を自分に取り入れるわけではない。環境に合わせて自分を変化させるわけではない。認知主体はそうした客観的な環境に対して認知行為しているのではなく、自らが構成する主観的な行為図式に即して認知行為している。自ら閉じた行為図式を自律的に構成、調整することで、認知主体はむしろ現実を発明していると考えられる。現実は、認知主体によって何の制約もなく発明、構成されるわけではない。グレーザーズフェルドの理論では「実行可能性(viability)」と呼ばれる各主体にローカルな概念がこれを説明するための基本概念となる。だがここでは記号創発システム論に寄せて、人間の現実構成におけるよりマクロな制約の方に注目してみよう。」

P.38 図3.4 記号創発システムモデルとHACSモデルの対応関係

「社会的な制約関係をシステム論的に捉えるなら、HACSモデルが有効である。実際、記号創発システムの図式中央部に描かれるエージェント間の記号的相互作用は、HACSによって把捉できるフィクショナルな情報伝達の様相として読み替えることが可能である。」
社会システムで活動しているエージェントがそのまま構成素にはならない。社会システムそれ自体が自律システムなので、その構成素はそれ自体で決めている。例えば、特定の学問的な議論では、直前になされた学問的な発言が次の学問的な発言に繋がっている。このような社会システムだったと時、発言が場に残り、発言者は発言の後ろに隠れる。その場で議論と無関係な発言があった場合、それは、その社会システムの構成素にはならない。

“記号創発システムモデルとHACSモデルを理論量子認知科学の「私の認知モデル」に読み替える。HACSでフィクションとするのは、例えば、言語の定義を厳密には共有していないことに繋がる。例えば、あなたと私が「意識」をテーマに話したとして、私が思い描いているようにあなたが私が説明した「意識」を理解できていることを私は確認のしようがない。このことは、私が会社員だった時、打ち合わせを重ねながら仕事を進めていた時、あるトラブルを体験した。その原因は次の2つのパターンだった。1 お互いに理解していた合意の解釈が異なっていた。 2 合意の構成素が足りていなかった。これは、HACSシステムにおける心的システムが異なることによる同僚の(知っていること, できること)に違いがあったこと、職場環境および組織体制という社会システムはあり、それを共有しているが、その解釈が異なっていたり、活用する構成素が異なることに起因していた。私が作成した標準業務手順書は社会システムの構成素であり、それを使って仕事をする同僚にはそれぞれ心的モデルがある。標準業務手順書を見れば仕事ができる同僚もいたが、内容が理解できなくて手が止まる同僚もいた。これも(知っていること, できること)の違いによる。部署の社会システムへの理解度、活用度もそれぞれの心的システムによる違いがあった。”

HACSシステムも創発的記号システムも自律システムを理解するためのモデル。基礎情報学にもコミュニケーションを空間的・概念的に媒介する「範列的メデイア」や、それによってアクセスされる「意味ベース」という概念がある。

創発的記号システムは自律システムとして理論化することは困難だが、ボトムアップな生成プロセスを「意味ベース」の生成プロセスとして、創発的記号システムのトップダウン的な制約プロセスを「範例的メディア」による「意味ベース」の利用プロセスとして位置付けられる。

“本著で使われている「閉じた認知」とはどんなもんなんだろう?「開いた認知」はあるのだろうか?限定合理性は「閉じた認知」該当するのだろう。認知は閉じたものであるという意味とも解釈できる。自律システムは活動を続ける限り、環境との相互作用により記憶する記号は増える。なぜならば、自律システムは意味を記号を創発するから。”

(続く)

 - モデル, 人工知能 ,

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