人財育成のモデル 観点4 by T. S.
2014/03/20
皆さん、こんにちは。あなたの理念の体現を支援する SHIMOMURA Takuji です。
「有効なBackgroundはあなたの理念に従い形成されます。」
プロローグ
私の人財育成モデルは5つの観点から構成されています。
(詳しくは「人財育成のモデル」をご参照下さい。)
1.仕事を成長の機会と捉えるマインドセットを涵養する。
(詳しくは「人財育成のモデル 観点1」をご参照下さい。)
2.作業手順を見える化する能力を高める。
(詳しくは「人財育成のモデル 観点2」をご参照下さい。)
3.作業効率を定量化する能力を高める。
(詳しくは「人財育成のモデル 観点3」をご参照下さい。)
4.関係する要素を複合的に判断して決断する能力を高める。
5.具体的な作業を実行する能力(正確・迅速)を高める。
今回は、観点4 関係する要素を複合的に判断して決断する能力を高める。 について説明します。
関係する要素 とは
何かの目的を達成することがこのモデルの前提になっています。
関係する要素は、目的を達成する段階によって異なります。
目的を達成する段階を以下に列挙します。ただし、これは私のモデルですので、あなたのモデルとは異なるかもしれません。その点はご容赦ください。
1.課題を見つける。感じる。
2.課題を解決する気持ちになる。
3.課題を解決する目的を決める。
4.課題解決に向けて一歩を踏み出す。
5.課題解決を推進する。壁を乗り越える。
6.課題を解決する。
それぞれの段階で関連する要素を以下に列挙します。
A. 現状の認識(1~6)
B. ありたい姿(1~6)
C. 変化しないということを含めて、変化の方向性(1)
D. その課題を解決するために影響を受けると思われる外的要因(2~5)
E. その課題を解決するために影響を受けると思われる内的要因(2~5)
F. その課題を放置した場合に予測されること(2)
G. その課題を解決する動機(3)
H. その課題を解決して得られる状態(3、6)
I. その課題を解決する方向性(4)
J. その課題を解決するために活用できる資源(4、5)
K. その課題を解決するためのコンセプト(5)
L. 壁を乗り越えるコンセプト(5)
1~6の各段階に関係する要素はA~Lです。
複合的に判断 とは
平たく言えば、「関係する要素を意思決定できるように組み合わせる」です。
例えば、私がサッカーの試合で経験したことを説明します。
その試合は、拮抗した試合でスコアは0-0、かなり押されている試合でした。私はトップのポジションでしたが、いつものポジションにいると、なかなかパスが回ってきませんでした。そこで、パスを受けることを目的として、前半途中からいつもより下がり目の位置にポジションを取ることにしました。そうすると、パスが回ってくるようになりました。そうしているうちに、後半残りわずかな時間帯でゴール前に押し込まれていた状況から、ピッチの右サイド、自陣のペナルティエリアとセンターサークル間でボールを受けました。ボールを受ける前から、バックの選手がダッシュで相手ゴールに向かっているのが目に入りました。2タッチ目で、その選手にパスを出すと、相手ゴールキーパーと1対1になり、キーパーの頭越しにシュートして、ゴールを決めました。結局、1-0でその試合に勝利しました。
この事例を1~6、A~Lを使って説明します。この試合で課題解決に向けて1歩を踏み出したタイミングは、いつもより下がり目のポジションを取った時からです。
1.課題を見つける。感じる。→「相手に押されている時間が長く続き、自チームの時間帯にならない。」
A. 現状の認識:相手チームに押されている。
B. ありたい姿:相手チームのプレッシャーをコントロールする。
C. 変化しないということを含めて、変化の方向性:自チームの時間帯を作る。ボールを保持する時間を長くする。
2.課題を解決する気持ちになる。→「このままでは、先制点を取られて負けてしまう。勝ちたい。」
A. 現状の認識:相手チームに押されている。
B. ありたい姿:相手チームのプレッシャーをコントロールする。
D. その課題を解決するために影響を受けると思われる外的要因:相手チームの戦略と技術、味方チームの戦略と技術、両チームの体力。
E. その課題を解決するために影響を受けると思われる内的要因:自分の戦略と技術、そして体力。
F. その課題を放置した場合に予測されること:先制点を相手に取られてしまう。
3.課題を解決する目的を決める。→「押されている試合に勝利することでチームを成長させる。」
A. 現状の認識:相手チームに押されている。
B. ありたい姿:相手チームのプレッシャーをコントロールする。
D. その課題を解決するために影響を受けると思われる外的要因:相手チームの戦略と技術、味方チームの戦略と技術、両チームの体力。
E. その課題を解決するために影響を受けると思われる内的要因:自分の戦略と技術、そして体力。
G. その課題を解決する動機:サッカー選手としての成長、チームとしての成長。
H. その課題を解決して得られる状態:勝利。
4.課題解決に向けて一歩を踏み出す。→「これまで以上にボールを呼び込む声を出し、味方選手に近付く。それを有効に機能させるために下がり目のポジションを取る。」
A. 現状の認識:相手チームに押されている。
B. ありたい姿:相手チームのプレッシャーをコントロールする。
D. その課題を解決するために影響を受けると思われる外的要因:相手チームの戦略と技術、味方チームの戦略と技術、両チームの体力。
E. その課題を解決するために影響を受けると思われる内的要因:自分の戦略と技術、そして体力。
I. その課題を解決する方向性:自身のポジションを下がり目にして、ボールを保持する時間を長くする。
J. その課題を解決するために活用できる資源:チームと自身の戦略と技術、そして体力。残り時間。
5.課題解決を推進する。壁を乗り越える。→「ここまで押された試合の経験はない。これまでにないプレー。いつもより下がり目にポジションを取り、味方チームのパスを呼び込む。これまでにないカウンター攻撃。細やかで素早いポジショニング。大きく動く。数少ないタッチでボールを回す。指示の声。守備への集中力。少ないチャンスをモノにする。」
A. 現状の認識:相手チームに押されている。
B. ありたい姿:相手チームのプレッシャーをコントロールする。
D. その課題を解決するために影響を受けると思われる外的要因:相手チームの戦略と技術、味方チームの戦略と技術、両チームの体力。
E. その課題を解決するために影響を受けると思われる内的要因:自分の戦略と技術、そして体力。
J. その課題を解決するために活用できる資源:チームと自身の戦略と技術、そして体力。残り時間。
K. その課題を解決するためのコンセプト:相手の攻撃を凌いで、カウンターで点を取る。
L. 壁を乗り越えるコンセプト:指示の声を出す。大きく動く。
6.課題を解決する。→「押されていた試合を1-0で勝利。」
A. 現状の認識:相手チームに押されている。
B. ありたい姿:相手チームのプレッシャーをコントロールする。
H. その課題を解決して得られる状態:勝利。
この試合はコンセプト通り、カウンターで点を取って勝利しました。
サッカーの試合での複合的な判断は局面の打開に集約されます。しかし、その局面にはBackgroundがあり、そのBackground作りも複合的に判断します。
この試合の得点は、あのタイミングしかありえませんでした。それまでの試合展開から、あのタイミングでバックがオーバーラップすることを相手チームは予測できていなかったのでしょう。事実、オーバーラップした選手をマークしていた相手選手は居ませんでした。
予測とプレー
既述の通り、私は関連する要素を意思決定できるように組み合わせ決断して行動しています。
その意思決定には連続性があります。
連続性とは、意思決定の瞬間までに蓄積された情報を組合わせる活動を脳内で意思決定毎に繰り返し実行しているということです。
更に、予測とプレーを繰り返しながらそれを実行しています。
例えば、サッカーの試合において、私は、自チームの状態、相手チームの状態(以下、その試合の状況)を常に意思決定しながら確認しています。これは試合毎に形成され、試合の状況として同じモノは一つもありません。この状況は自身を含む全選手のプレーに対する認識から私が確認することになります。
1対1のプレーは、その局面における成功、不成功の観点から切り取って評価できますが、その試合におけるそのワンプレーの位置付けは切り取って評価できません。前後の流れの中で評価されることになります。
それでは、具体的な意思決定の場面を詳細に見てみましょう。
その試合の状況が意思決定の「手前のBackground」になります。そして、意思決定には「向こうのBackground」があり、それは前回の試合までの経験の蓄積になります。つまり、蓄積された経験を基準として、その試合の状況が判断されます。更に、細かく見るとその試合のその意思決定を行う瞬間までの経験の蓄積が「向こうのBackground」になり、その瞬間が「手前のBackground」になります。
意思決定直後に「手前のBackground」は「向こうのBackground」に組み込まれます。このようにして、試合が始まると「向こうのBackground」が常に書き換えられていきます。そして「向こうのBackground」と同じメカニズムで「手前のBackground」が形成され、両者を切り離すことなく一体化して運用します。試合が始まると「向こうの向こうのBackground」(前の試合までの経験の蓄積)、「向こうのBackground」(今日の試合における経験の蓄積)、「手前のBackground」(直前の瞬間的な経験)がシームレスに存在することになります。
次に試合の状況が変化する中で、試合の主導権を握る場面を考えてみましょう。私のモデルは次の通りです。
ボールを保持できて、ボールを奪ってから短時間に相手ゴール前に攻め込み、タイミング良くシュートを打つことが出来て、そのシュートが決まる。
相手ボールを素早く奪取できて、ゴール前のリスクを未然に防ぐことができる。
ボールが保持できる。 パスコースが複数ある。ボールを常に相手選手から遠い位置でプレーできる。味方選手がボールを持ち過ぎない。
ボールを奪ってから短時間に相手ゴール前に攻め込む。 攻守の切り替えが早い。味方ボールになる瞬間にオーバーラップしている。パスをスペースに出している。チーム全体が相手ゴールに向かっている。
タイミング良くシュートを打つことが出来る。 味方選手はゴールが見えたらシュートを打っている。シュートレンジではパスでなくシュートを優先している。
シュートが決まる。 相手ゴールキーパーの守備範囲外にシュートしている。ショットの精度が高い。相手選手がシュートコースに入る前にシュートを打っている。
相手ボールを素早く奪取する。 攻守の切り替えが早い。複数の味方選手が連携を取りながら相手ボール保持選手にアプローチしている。
ゴール前のリスクを未然に防いでいる。 シュートコースを空けない。ゴール前でマークを外さない。ゴールキーパーがコーチングしている。
ここに列挙した項目は「向こうのBackground」から出てきた要素です。これらの要素とその瞬間の「手前のBackground」を対比させて、私は意思決定しています。
これら「向こうのBackground」から出てきた要素は、「試合で主導権を握る」ために「有効なBackground」となります。
私はサッカーの試合では、「向こうのBackground」から「有効なBackground」を形成し、それを意識して選択的に情報収集してチームメートに働きかけて、状況を作り出せるように(ゴールを決める、ゴールを守る)意思決定していました。
このBackgroundの上に、流れのある中で、瞬間的な意思決定を行います。
また、「有効なBackground」を形成するために試行錯誤を繰り返し、大量行動することもありました。しかし、「有効なBackground」に普遍性が出てくると、試行錯誤の時間が短くなり、「試合で主導権を握る」ために集中する時間の割合が高まって行きました。
これが私のサッカーの試合における予測とプレーの全体像と本質です。
これは、ビジネスの世界にも共通しています。
人財育成の観点4 関係する要素を複合的に判断して決断する能力を高める とは
それは、「目標を達成するまでにBackgroundから有効な要素を抽出し、それらを組み合わせ瞬間的な意思決定を繰り返す。そのために、自ら立てた問いに答えを出す、若しくは答えを出すために活動し続ける思考―行動力を高める」と言い換えることができます。
この実行はBackgroundisation(Background化)がキーワードになります。Backgroundには連続性があり、あなたが意思決定した瞬間に、その決断は過去のモノになります。「有効なBackground」はあなたの理念に従い形成されます。理念は場の認識を前提とし、その認識があなたの役割を定義しています。
何を選択(what)し、どう運用する(how)か?その理由(why)は? すべてはBackgroundにあります。
あなたは、どのようにしてBackgroundを形成して来ましたか?
更に、Backgroundisationの能力を高めるためには、どのような体験が必要だと思いますか?
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